
インフレ、円安、株式市場の変動…。これまで“安定資産”とされてきた金融商品や不動産でさえ、今では安心できない時代になりました。そんな中、富裕層や経営者たちの間で静かに注目を集めている資産があります。
それが「高級時計」です。
かつては“趣味の世界”とされてきた高級腕時計ですが、今では実物資産の一種として、本気で「資産形成」の対象となりつつあるのです。ロレックス、パテック・フィリップ、オーデマ・ピゲ…。これらの時計は、時を刻むだけでなく、数年で価値が2倍、3倍になることも珍しくありません。
もちろん、単なる流行ではありません。実際に「時計投資」で資産を増やした事例は国内外に数多く存在し、その戦略は金融リテラシーの高い層ほど実践している現実があります。
とはいえ、時計投資には落とし穴もあります。人気モデルに偏った流動性の問題、偽物のリスク、保管や維持コスト、そして税務上の注意点…。これらを理解せずに始めれば、期待したリターンどころか資産を毀損することさえあり得ます。
この記事では、時計投資の基礎から、リターンとリスクの全体像、そして「本当に価値ある1本」の選び方まで、実践に役立つ視点を網羅的に解説していきます。
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高級時計が「投資対象」として注目される理由

かつて高級時計は、“贅沢品”や“ステータスの象徴”という側面が強く、主に趣味やファッションの延長線上にある存在でした。しかし近年、その立ち位置が大きく変化しています。今では高級時計が「実物資産」としての価値を持ち、投資対象として注目を集めているのです。
時計は「嗜好品」から「実物資産」へ
この10年でロレックスやパテック・フィリップ、オーデマ・ピゲといった一流ブランドの時計が資産として評価されるようになった背景には、いくつかの要因があります。その一つが「市場価格の安定性と上昇傾向」です。例えばロレックスのスポーツモデル「デイトナ」は、新品の定価が約180万円にもかかわらず、中古市場では500万円以上で取引されるケースも珍しくありません(2024年時点)。
これは単なるブームではなく、長期的な需要と供給のバランス、そしてブランドが生み出す希少性や信頼感に基づいた動きです。ブランド側が製造本数を意図的に制限していることもあり、希少性が維持されやすく、それが価格上昇を支えている構図になっています。
世界的なインフレ、円安、金融不安から実物資産が脚光を浴びている背景
世界経済が大きく揺れ動く中で、多くの投資家が「紙の資産」だけに依存することのリスクを再認識するようになりました。特に2022年以降、世界中でインフレ率が上昇し、日本でも**2023年の物価上昇率は前年比3.2%**と、日銀の目標を上回る状況が続いています。インフレが進めば、現金の実質的な価値は下がる。そうした局面でこそ「実物資産」の出番です。
さらに、円安の影響で輸入品である高級時計の価格は右肩上がり。ロレックスは2022年〜2024年の間に正規販売価格を約20%以上引き上げたとも言われています。これは日本国内で保有していた高級時計の「含み益」が一気に拡大したことを意味します。
このように、インフレや為替変動に強い実物資産として高級時計が注目されているのです。
富裕層・経営者層における保有意識の変化
もう一つ重要なポイントは、高所得者層の“保有の目的”が変わってきていることです。以前は「見せるため」「自己満足のため」に買われていた時計が、現在では「資産としての保存」や「相続財産としての活用」を目的に保有されるケースが増えています。
富裕層の資産構成では、不動産や金融商品と並んで高級時計や美術品といった「可搬性が高く、個人で管理可能な実物資産」が占める割合が高まっているというデータもあります。これは、資産が目減りしづらい安全資産として、時計が選ばれていることの証左でもあるでしょう。
高級時計投資の基礎知識と前提

「投資」という言葉を聞くと、多くの方が株式や不動産を思い浮かべるはずです。しかし、資産運用の世界ではそれ以外にも重要な存在があります。それが「実物資産」と呼ばれるカテゴリーです。
実物資産とは?時計と金・不動産の比較
実物資産とは、文字通り「手に取ることができる資産」のこと。代表的なものには金(ゴールド)、不動産、美術品、そして高級時計が含まれます。
項目 | 金 | 不動産 | 高級時計 |
---|---|---|---|
流動性 | 高い | 中程度 | 中程度〜高い(モデル次第) |
保管コスト | 小 | 高 | 中 |
価格変動 | 比較的安定 | 地域・景気に左右される | モデルにより大きく異なる |
分散効果 | 高い | 高い | 高い |
高級時計は、価格変動こそモデルにより異なるものの、小さなスペースで管理でき、必要に応じて海外に持ち出すことも可能という独自の強みがあります。資産の分散性という点で、不動産とは異なる機動性を持っているのがポイントです。
高級時計投資の特徴:ステータス性 × 資産価値
高級時計の魅力は、単なる価格上昇だけではありません。「身に着けることができる資産」という側面もまた、他の実物資産にはない大きなメリット。自身のライフスタイルの一部として楽しみながら、将来的な資産形成にもつながるという、まさに一石二鳥の投資対象なのです。
そして、ブランドによっては定期的に価値が上がるモデルを出しており、「ステータス」としてだけでなく「長期投資対象」として確かな実績を持つモデルも少なくありません。
投資目的の明確化:「値上がり益狙い」「資産分散」「相続対策」など
時計投資に取り組む上で重要なのが、目的をはっきりさせることです。
- 値上がり益狙い:中期〜長期で価値が上がるモデルに投資し、売却益を得る
- 資産分散:株や不動産と異なる動きをする資産を組み入れて、全体のリスクを分散
- 相続対策:資産評価の低いタイミングで相続し、評価益は相続後に享受する
このように、投資目的を明確にすることで「どのブランド・どのモデルに・どのタイミングで投資すべきか」の判断も精緻になり、リスクの最小化とリターンの最大化が狙えるのです。
リターンの可能性と成功パターン

高級時計投資の最大の魅力は、実物を楽しみながら資産としての価値上昇が期待できる点にあります。特に一部のモデルは数年で倍以上の価格になることも珍しくありません。ただし、リターンを得るには「正しいモデルの選定」と「市場動向の理解」が必要不可欠です。
価値が上昇しやすいモデルとは?
高級時計の中でも、価格が上昇しやすいモデルには明確な共通点があります。主に以下の3つがそのカギを握っています。
1. ブランド力
時計投資の世界で「ブランド」は最重要項目です。ロレックス(Rolex)、パテック・フィリップ(Patek Philippe)、オーデマ・ピゲ(Audemars Piguet)などの一流ブランドは、国際的に確立された価値を持ち、流通市場でも圧倒的な需要があります。中でもロレックスは、全世界で常に供給不足状態が続いており、正規店で購入できる確率が極めて低いため、市場価値が高騰しやすい構造になっています。
2. 製造本数や限定性がもたらす希少価値
限定モデルや廃盤モデルは、市場に出回る本数が少ない=希少価値が高いという点で投資対象として非常に魅力的です。パテック・フィリップの「ノーチラス5711」などは、製造終了後にプレミアが急騰し、瞬く間に1,000万円を超える価格が付いた例もあります。
3. セカンダリーマーケットにおける人気傾向
新品の定価以上で取引されているか、過去の販売履歴が安定して右肩上がりであるかなど、中古市場での実績データも重要な判断材料です。Chrono24やWatchBoxなどのグローバル時計マーケットプレイスを定点観測することで、人気モデルの推移や需要の波をつかむことができます。
リターン事例と実際の価格推移
実際にどのようなモデルが、どの程度のリターンをもたらしているのか。ここでは代表的な2モデルの価格推移を具体的に見てみましょう。
1. ロレックス デイトナ(Ref.116500LN)
このモデルは2016年に発売された当初、国内正規店での定価は約135万円でした。ところが発売直後から入手困難となり、2022年には中古市場で500万円前後で取引されるように。2024年現在はやや落ち着いたものの、それでも約400万円前後で安定推移しており、8年でおよそ3倍以上のリターンを実現した形になります。
2. パテック・フィリップ ノーチラス5711
こちらはラグジュアリースポーツウォッチの代表格で、2021年に製造終了が発表されて以降、価格が爆騰。定価は約400万円でしたが、2022年にはオークションで1,000万円以上の値が付いたことでも話題になりました。2024年時点でもプレミア価格は継続中で、高値圏を維持しています。
これらの事例は、単なるブームではなく、継続的な需要・流通・ブランド力に裏打ちされた価格形成であることが分かります。
為替と高級時計価格の連動
時計価格は「ブランドの拠点通貨」であるスイスフラン(CHF)やユーロ(EUR)の影響を大きく受けます。そのため、円安局面では輸入時計の価格が上昇しやすく、結果的に国内販売価格も吊り上がる傾向にあります。
たとえば2021年〜2023年にかけて、円は対スイスフランで20%以上下落しました。その結果、ロレックスやパテック・フィリップは日本国内での定価を約2割以上引き上げる動きとなりました。この価格上昇は、すでに時計を保有していた人にとっては「含み益の増加」というメリットとなります。
さらに、為替差益を活かした戦略として、「海外で購入→日本で売却」というモデルも存在します。例えばスイスの正規店で安く購入し、日本の中古市場で高値で売却すれば、円安が進行しているタイミングでは為替差益も加わり二重のリターンを得ることが可能です。
ただし、この戦略には持ち帰り時の関税・消費税の申告義務、および販売益にかかる税務処理も伴うため、実践には慎重なリサーチと計画が求められます。
高級時計投資に潜むリスクとは?

投資にリターンがある以上、当然ながらリスクも存在します。高級時計投資がいかに魅力的であっても、その裏には慎重に見極めるべき落とし穴がいくつも潜んでいます。このセクションでは、代表的な5つのリスク要素を、具体例を交えながら掘り下げていきましょう。
流動性リスク
高級時計は株式や投資信託のように「ワンクリックで即売却」とはいきません。市場で売却先を見つける必要があるため、売却タイミングや手段によっては希望価格で捌けない可能性があります。
特に注意したいのが、人気モデルへの資金集中です。例えばロレックスのスポーツモデルは圧倒的な人気を誇る一方で、それ以外のドレスモデルや一部ブランドのエントリーモデルは、買い手が付きにくい=売却しにくい構造があります。保有資産の一部としての魅力はあっても、「いつでも現金化できる」資産とは言えない点に注意が必要です。
真贋・コンディションリスク
高級時計市場では、偽物やコンディション不備のリスクが常に存在します。精巧に作られたコピー品は年々技術が向上しており、素人では見分けがつかないレベルにまで達しています。
また、オーバーホール歴やパーツの交換歴、リューズの摩耗や微細なキズなども査定価格に大きな影響を及ぼす要因です。たとえば、パテック・フィリップの時計でも、純正部品以外で修理された場合は最大で数十万円の価値下落につながることもあります。
信頼できる業者やオークションハウスから購入し、購入後も定期的なメンテナンス履歴を記録しておくことが重要です。
保管・維持コスト
高級時計は「モノ」であるがゆえに、保管と維持にコストがかかる点も無視できません。
セキュリティ対策
自宅に保管する場合は耐火金庫の導入が推奨されますし、複数本を所持する場合には銀行の貸金庫を活用するケースも増えています。貸金庫の年間使用料は地域やサイズにもよりますが、年間1〜3万円前後が相場です。
メンテナンス費用
時計は精密機械です。3〜5年ごとの定期オーバーホール(分解清掃)が必要で、ブランドにもよりますがロレックスなら約5〜8万円、パテック・フィリップであれば10万円超となる場合もあります。定期的なメンテナンスを怠ると、将来的な価値下落だけでなく、機械そのものが破損するリスクも高まります。
トレンド・人気の変動
どんなに人気のモデルでも、その人気が永続するとは限りません。時計投資は一種のファッション的要素を含んでおり、映画やセレブの着用によって一時的に人気が高騰することも。
たとえば、某有名アーティストが着用したことで突如注目されたモデルが、半年後にはブームが去り価格が半減した例もあります。高値で掴んでしまうと、そのまま資産が“塩漬け”になるリスクを伴います。
こうした流行に左右されにくい、「定番」や「長年支持されてきたシリーズ」を選ぶことが、時計投資では特に重要です。流行に乗るのではなく、歴史的価値・製造背景・流通の安定性などをもとに冷静な判断を下す目が求められます。
税務リスク・法的リスク
高級時計投資では、税務処理や法律的なトラブルリスクにも注意が必要です。
譲渡所得と確定申告
個人が時計を売却して得た利益は、「譲渡所得」に分類され、年間50万円を超えると課税対象になります。これを申告しなかった場合、後から追徴課税を受けるリスクがあるため、売買履歴や領収書をしっかり保管しておくことが重要です。
相続資産としての評価
時計は相続財産としても課税対象になります。近年、税務署は高額腕時計の相続申告漏れに対しても目を光らせており、特にパテック・フィリップやリシャール・ミルなどの超高額モデルは査定対象として見なされやすい傾向にあります。
海外購入・持ち帰り時の関税問題
海外で購入した時計を日本へ持ち帰る場合、20万円を超える物品は課税対象になります。これを免税品と偽って持ち込んだ場合、関税法違反として罰則が課されるリスクがあるため、空港での申告を忘れずに行いましょう。
投資としての魅力がある一方で、こうした多面的なリスクをきちんと理解しておかなければ、大切な資産が目減りしてしまう可能性もあります。リスクはゼロにできませんが、認識し、準備することで最小化することは可能です。リターンばかりに目を向けず、「守る」視点を持つことが、成功への鍵となるでしょう。
購入戦略と投資モデルの選び方

高級時計を「資産」として見なすなら、購入の際に重視すべき視点は「趣味」ではなく「投資効率」です。では、どのようにして“価値のある1本”を選び抜くのか。ここでは購入時に押さえるべき判断軸や、投資家目線での選定基準を整理してみましょう。
ブランド・モデル選定の基本軸
時計投資の王道ブランドとその理由
まず、安定したリターンを狙うなら、ブランド力のある時計を選ぶのが鉄則です。具体的には以下の3ブランドが代表的です:
- ロレックス(Rolex):全世界的に安定した需要があり、供給数が限られているため、価格の下落リスクが小さい。
- パテック・フィリップ(Patek Philippe):資産価値の高さと希少性が魅力。特に生産終了モデルは価格が急騰する傾向。
- オーデマ・ピゲ(Audemars Piguet):デザインとブランドストーリーで支持され、海外富裕層に人気。
これらのブランドは、中古市場における流動性が高く、資産としての換金性が極めて高いことが最大の特徴です。
限定モデルとヴィンテージの違いと注意点
投資対象として魅力的なのが限定モデルとヴィンテージモデルですが、両者には明確な違いがあります。
- 限定モデルは販売本数が極めて少なく、発売直後からプレミア価格が付きやすい。ただし、人気がなければすぐに価値が下がるリスクも。
- ヴィンテージモデルは、製造から時間が経過しており、歴史的価値や生産背景が価格に影響。状態が良い個体はプレミアムが高騰しやすい一方で、真贋リスクや部品交換歴などで評価が大きく変動します。
どちらも長期視点での希少価値と、入手時のコンディションの見極めが非常に重要です。
国内購入 vs 海外購入の比較
高級時計は「どこで買うか」も投資効率に大きく関わってきます。
国内購入
- 正規店:正規の保証が受けられ、安心感が高い。ただし人気モデルは抽選制で入手困難。
- 並行輸入店:価格は正規より安い場合もあるが、保証体制やメンテナンスに不安が残る。
- 中古専門店:中古市場の掘り出し物を狙える反面、真贋の判断は自己責任になる。
海外購入
- スイスや香港などの正規店・免税店:円安時には価格が高くなりがち。逆に円高時は割安で仕入れられるチャンス。
- 海外オークション・展示会:希少モデルが出品されることもあり、プレミアムな1本に出会える可能性も。ただし、英語での交渉や税関手続きの知識が不可欠。
いずれの場合も、アフターサポート・保証の有無、そして税務申告の手間を含めて総合的に判断しましょう。
投資家目線のチェックポイント
保証書・付属品の有無
時計の価値は本体だけでなく“箱・保証書・タグ”などの付属品の有無でも大きく変動します。特に保証書は真贋判定に直結する重要書類です。
ケース・ベゼル・ブレスレットの状態
目に見えない小さなキズでも、専門家の目にはわかります。無垢素材やポリッシュ済みか否かなど、外観の状態は査定額に大きな影響を与えます。
保有期間戦略(短期回転 vs 長期保有)
短期売買では価格変動リスクを伴いますが、長期保有であれば市場価値が安定してきた段階での売却が可能です。時計の市場動向を見極め、適切なタイミングを狙う戦略が求められます。
高級時計投資の注意点と心構え

投資としての魅力を理解したうえで、次に重要なのが“心構え”です。ここでは、冷静な判断を保ちつつ長期的に資産価値を育てるための視点を整理します。
感情に流されない判断
「好きだから買う」は趣味の領域ですが、投資では「価値が上がるかどうか」が主軸です。過去の価格推移、製造本数、ブランドの今後の方向性など、客観的に情報を集めて判断しましょう。感情に支配されると高値掴みのリスクが高まります。
分散ポートフォリオにおける位置づけ
高級時計投資は、あくまでポートフォリオの一部にすぎません。推奨される割合は総資産の5〜10%以内。過度な依存は危険です。
また、時計は株式や不動産と価格変動の相関性が低いため、分散投資の観点でも有効です。実物資産としての「守りの資産」として機能する可能性があります。
税務・申告の準備と理解
将来的に売却益が出た場合、譲渡所得の申告義務が生じることを理解しておく必要があります。購入価格・売却価格・保有期間の記録は日頃から保管しておきましょう。
また、相続の際には、時計の市場価値が相続財産に加算されるため、事前に資産評価や専門家との相談を行うことが大切です。
ESGと新たな潮流
近年注目されているのが、サステナビリティ(持続可能性)を重視する投資家の増加です。高級時計ブランドの中でも、再生可能素材やエシカル調達を取り入れているブランドは、今後プレミアムの評価対象となる可能性も。
環境・社会・ガバナンス(ESG)の観点からも、ブランドの企業姿勢を読み解くことが、長期的な価値保持に役立つ時代へと変わってきているのです。
まとめ:高級時計投資は「美」と「価値」の融合。冷静な視点で資産を守る一手に

高級時計は、単なる嗜好品ではありません。それは「時を刻む機械」であると同時に、「価値を蓄える器」でもあります。ロレックス、パテック・フィリップ、オーデマ・ピゲ──これらの時計に宿るのは、精緻な機構と比類なき美しさ、そして時代を超えて評価される資産性です。
実物資産としての魅力とリスクを理解する
高級時計は、金や不動産と並ぶ実物資産の一つ。インフレ対策や通貨分散の観点からも、現物資産を保有する意義は年々高まっています。さらに、腕に着けて楽しみながらも、その背後に数百万円〜数千万円という確かな価値があるという特性は、他の金融商品にはない魅力です。
ただし、ここまで見てきたように、時計投資には流動性・保管・税務・トレンド変動などの複合的なリスクも存在します。過信は禁物。冷静な視点を常に持ち、適切な情報と専門知識に基づいた判断が求められます。
好きなモノを通じて資産形成するという選択肢
資産運用というと、つい数字やチャートばかりに目が行きがちですが、時計投資は少し違います。“好き”という感情と“資産形成”という目的が共存できる、数少ない投資領域の一つです。
美しいもの、手間暇かけて作られたもの、歴史があるもの。そうしたモノを通じて資産が育っていくことは、人生に彩りを与えると同時に、お金そのものに対するリテラシーや感覚も自然と磨かれていくはずです。
「好きなことが資産になる」。この事実は、これからの時代の新しい投資のスタイルかもしれません。
感情と市場分析をバランスさせた「賢い時計投資」のすすめ
成功する時計投資家に共通するのは、「情熱」と「分析力」の両輪を持っていることです。好きだからこそ深く学ぶ。だからこそ冷静に判断できる。このバランス感覚が、長く価値ある1本を育てる鍵になります。
市場価格の推移、モデルごとの供給量、ブランド戦略、国際的な経済動向――。こうしたファクターを丁寧に読み解きながら、それでも自分の心が動く1本を見つける。その体験は、単なる投資の枠を超えて、人生の中で“誇れる資産”を手に入れることにもつながるでしょう。
「美しさ」と「価値」が共存する高級時計は、まさに時を超えて継承される資産です。冷静な目線で選び、情熱をもって育てる。そんな“賢い投資家”の一歩を、ぜひ今日から踏み出してみてください。

ファイナンス専門ライター / FP
資産運用、節税、保険、財産分与など、お金に関する幅広いテーマを扱うファイナンス専門ライター。
金融機関での勤務経験を活かし、個人投資家や経営者向けに分かりやすく実践的な情報を発信。特に、税制改正や金融商品の最新トレンドを的確に捉え、読者の資産形成に貢献することを得意とする。