
「不動産投資=数千万円の区分マンションをフルローン」。
この図式、そろそろアップデートの時期かもしれません。
東証REIT指数(上場不動産投資信託)の予想分配利回りは5.1%。10年国債の1.3%前後と比べると、利回りスプレッドは約3.8ポイントも開いています。しかも1口5〜10万円台で売買でき、管理業務は不要。要は“賃料を証券化したファンド”をネット証券でポチれるわけです。ナム
さらに――
- 1万円から案件を選べる不動産クラウドファンディング
- “1口100万円”で直接所有権を持てる小口化商品
- 為替ヘッジ付きでドル建て賃料を刈り取る米国REIT ETF
- ブロックチェーン上で流通する不動産セキュリティトークン
と、「借金×フルローン」以外の選択肢が急拡大しました。本稿では、100万円を元手に試せる5+αルートを比較しつつ、目的別に“勝ち筋”をマッピングしていきます。
3分サマリー|目的別“勝ち筋チャート”
優先事項 | 最適ルート | 目安利回り | 資金ロック |
---|---|---|---|
配当キャッシュ | J-REIT/米国REIT ETF | 3.5〜5.0% | 即時売却可 |
値上がり益 | REIT ETF+為替差益 | 4〜6%+為替 | 即時売却可 |
節税・相続 | 小口化商品(任意組合型) | 3〜4% | 5〜10年 |
短期運用 | クラウドファンディング | 3〜7% | 6〜24 か月 |
Web3×高流動 | 不動産セキュリティトークン | 約4% | 取引所次第 |
ここがポイント
「何を優先したいか」でルートは変わります。配当ならJ-REIT、相続対策なら小口化──100万円だからこそ“用途特化”が効くのです。
第1章 選択肢①|J-REIT――東証で買える“賃料ファンド”

1-1|1口5万〜10万円・全57銘柄の最新利回り
2025年7月時点、東証には57本のJ-REITが上場。最低投資額はオフィス特化で約5万円、物流特化でも10万円台とハードルが低い。利回り上位5銘柄は――
銘柄 | セクター | 予想利回り | 必要資金(概算) |
---|---|---|---|
① エスコンJ-REIT | 商業施設 | 5.8% | 55,000円 |
② ジャパン・ホテル・リート | ホテル | 5.6% | 72,000円 |
③ いちごホテルリート | ホテル | 5.5% | 63,000円 |
④ 日本ビルファンド | オフィス | 5.3% | 107,000円 |
⑤ GLP投資法人 | 物流 | 5.2% | 122,000円 |
(※フィデリティ投信「J-REITマンスリー・ウォッチ」2025年6月末版より抜粋)fidelity.co.jp
1-2|税コストを最小化する2パターン
- 新NISA成長投資枠
分配金・売却益ともに非課税。年間240万円枠の一部をJ-REITで埋める戦略。 - 特定口座+損益通算
他の株式・投信と損益通算し、分配金にかかる所得税(20.315%)を節税。
第2章 選択肢②|不動産クラウドファンディング

2-1|OwnersBook:最小1万円・平均4.5%
公式サイトによれば、最低投資額1万円・実質利回り平均4.5%。都心オフィス向けの貸付型案件が中心で、担保評価額の70%以内にローンを絞る conservative な審査が特徴です。OwnersBook(オーナーズブック)
2-2|CREALほか16社のスペック比較
CREALは最低1万円、平均利回り4.0〜7.0%。他社も含めた“最低投資額ランキング”は――
サービス | 最低投資額 | 想定利回り | 運用期間 |
---|---|---|---|
CREAL | 10,000円 | 4.0〜7.0% | 6〜24 か月 |
Jointo α | 10,000円 | 3.5〜6.0% | 12〜30 か月 |
FUEL | 50,000円 | 4.0〜6.5% | 4〜12 か月 |
(出典:CREAL公式ブログ「不動産クラウドファンディング利回り比較」2025年6月)creal.jp
2-3|“流動性リスク”と元本毀損事例
途中解約不可が基本。過去には地方ホテル案件で賃料遅延→元本15%毀損という例も。案件ページの「LTV(担保掛目)」と「優先劣後比率」を必ず確認したい。
第3章 選択肢③|不動産小口化商品

3-1|任意組合型:1口100万円で相続評価圧縮
CREAL CRE Funding の任意組合型商品は、相続税評価額が購入価額の70%前後に圧縮されるケースが多い。投資期間5〜10年、想定利回り3〜4%。ジャパンREIT
3-2|匿名組合型:1万円からOK、ただし短期解約は不可
元本を短期で引き上げたい人は不向き。期中売買のできるマーケットも限定的なので、実質ロック商品と割り切る必要があります。
第4章 選択肢④|海外REIT ETF(VNQ・REET ほか)

4-1|経費率0.08〜0.15%、為替ヘッジで2通りの戦い方
*Vanguard Real Estate ETF(VNQ)*の経費率は0.13%。ドル建てで賃料を受け取りつつ、円安局面でキャピタルも狙える“一粒で二度おいしい”仕組みです。advisors.vanguard.com
- ヘッジなし:円安=評価額アップ。
- ヘッジあり:為替変動を殺して純粋に米REITの動向を取りに行く。
4-2|“ドル建て家賃”を取り込むコツ
- 毎月1万円ずつドル転してETFを積み立てる。
- 分配金は再投資。手数料ゼロの「DRIP(自動再投資)」対応証券を選ぶ。
- 為替差益課税(雑所得)に注意。年間20万円超は確定申告が必要です。
第5章 選択肢⑤|REITインデックス投信――“100円積立”で疑似オーナー

5-1|信託報酬0.20%未満の3本をピックアップ
ファンド | 信託報酬 | 最低買付 | 特徴 |
---|---|---|---|
eMAXIS Slim 国内リート | 0.187% | 100円 | 業界最安水準を随時更新する“コスト破壊王” ダイヤモンド・オンライン |
SBI・iシェアーズ・Jリート | 0.1716% | 100円 | 東証REIT指数連動、クレカ積立でポイント還元 |
ニッセイJリートインデックス | 0.187% | 100円 | 純資産残高が拡大中、流動性◎ |
メリットは2つ。
- 分配金を自動再投資でき、複利効果が最大化。
- 100円単位×クレカ積立でポイント還元0.5〜1%、実質利回りを底上げ。
ワンポイント
J-REIT現物と違い、投信は“特定口座源泉徴収あり”で税処理がワンタッチ。初心者の手間を一気に減らしてくれます。
第6章 選択肢⑥|不動産セキュリティトークン(ST)――Web3 時代のデジタル大家

6-1|1口10万円・譲渡はブロックチェーン経由
SBI証券の販売実績を見ると、ST案件は1口10万円・運用期間約7年が主流。譲渡も「Progmat」などブロックチェーン上で行われ、紙の名義書換は不要です。SBI証券
6-2|大阪デジタルエクスチェンジ(ODX)の取引開始
2023年12月に私設取引システム「START」が始動し、国内初のST二次流通市場が誕生。流動性はまだ薄いものの、“途中売却できる不動産”という新カテゴリが動き出しました。odx.co.jpodx.co.jp
6-3|メリットとリスク
- メリット:譲渡益・分配金ともにオンラインで一元管理。LTVや賃料推移をダッシュボードで確認でき、透明性が高い。
- リスク:市場参加者が少なく、売りたいタイミングで買い手がいない可能性。プロトコル障害時の清算フローも要確認。
第7章 ケーススタディ|100万円で組む3モデル
モデル | 構成 | 期待利回り | 資金ロック | 年間キャッシュフロー(概算) |
---|---|---|---|---|
A:配当重視 | J-REIT 100% | 5.0% | なし | 5万円 |
B:分散型 | クラファン50%+米REIT ETF50% | 4.5% | 6〜12か月 | 4万5,000円 |
C:相続対策 | 小口化100% | 3.5% | 5〜10年 | 3万5,000円 |
シミュレーション条件:税引前/分配再投資なし/為替±0
解析
- Aは最も即効性のあるキャッシュ製造機。ただし価格変動リスクも高い。
- Bは為替分散+複数案件で“リスクの出どころ”を分散。
- Cは利回り控えめだが、相続評価額を約30%カットできる点が唯一無二。
第8章 税務・コスト・流動性を俯瞰する“4象限マップ”
流動性↑
| 米REIT ETF J-REIT
|
|
税優遇 | ST 小口化商品
| (任意組合)
| クラファン
|
コスト↓
- 右上は“売りやすくコストも低い”王道。
- 左下は“節税メリット”と引き換えにコスト・ロック期間を受け入れるエリア。
- 自分の資金ニーズ×節税ニーズを座標に落とすと、最適解が一瞬で見えます。
第9章 “レバなし100万円”がフルローン区分投資に勝つ理由

- 金利上昇局面でのCF耐性
- レバなし:分配金が下がっても元本毀損に直結しない。
- フルローン:金利1%上昇でCFが赤字転落するケースも。
- 修繕・空室リスクの外部化
- J-REITやSTは運用会社が修繕計画とリーシングを担う。
- 区分オーナーは自腹+自力でテナントを探す必要あり。
- 出口の選択肢が多い
- 証券なら板で売却、STならPTS、クラファンなら償還待ち。
- 区分は“買い手/銀行融資”の2条件が揃わないと動けない。
第10章 始め方ガイド|“10 ステップ”で初回エントリー
- 証券口座を開設(NISA枠利用なら成長投資枠を選択)
- 銀行から10万円を入金、J-REIT1口を買う
- クラファン3社に会員登録→本人確認
- 各社で最低額1万円ずつテスト投資
- 小口化商品の資料請求→デューデリ5項目を確認
- 米ドル口座を開設→毎月1万円をドル転
- VNQを定額積立に設定
- ST販売会社でKYC→案件をウォッチリストに追加
- 各投資の分配予定表をGoogleカレンダーに登録
- 半年後、評価額とキャッシュフローをレビュー→再配分
まとめ&次の一手

- 100万円でも“不動産×複数ルート”でリスクを細切れにできる
- 最初の行動はシンプル――「J-REITを1口買い、クラファンに1万円入れる」
- 小さく始めて“キャッシュが落ちてくる感覚”を掴めば、次の100万円の設計図が鮮明になります。
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※2025年7月22日時点のデータを使用。制度・利回りは変動します。投資は自己責任で行ってください。

ファイナンス専門ライター / FP
資産運用、節税、保険、財産分与など、お金に関する幅広いテーマを扱うファイナンス専門ライター。
金融機関での勤務経験を活かし、個人投資家や経営者向けに分かりやすく実践的な情報を発信。特に、税制改正や金融商品の最新トレンドを的確に捉え、読者の資産形成に貢献することを得意とする。