
空き家問題は、もはや一部地域の課題ではありません。総務省の「住宅・土地統計調査(2018年)」によると、日本全国の空き家数はおよそ849万戸、住宅全体の13.6%にも上ります。特に地方部や郊外エリアでは築年数の古い戸建て住宅が放置され、社会的にも経済的にも大きな損失となっているのが現状です。
一方で、個人投資家にとってこの“築古戸建て”こそが、極めてユニークな投資対象として注目を集めています。背景には、2つの重要な経済トレンドがあります。
1つは「超低金利時代の長期化」。銀行預金の利息は年0.001%という異常な低水準で、資産を眠らせていては目減りするばかり。
もう1つは「インフレ懸念の再燃」。円安や物価上昇が続く中、資産の“実質価値”を守るためには、実物資産へのシフトが求められています。
築古戸建て投資は、まさにこの2つのニーズに応える存在。低コストで始められ、適切なリノベーションを施すことで、安定した家賃収入と高利回りを実現できる可能性があります。
この記事では、単なる理論ではなく、収益化に直結する“実践的な戦略”にフォーカスして解説していきます。築古戸建て投資に可能性を感じている方が、「最初の一歩」を踏み出せるような確かな情報をお届けします。
第1章:「築古戸建て投資」の全体像とメリット・デメリット

築古戸建て投資とは、その名のとおり築年数の古い一戸建て住宅を購入し、リフォームやリノベーションを加えた上で貸し出す、または再販して収益を得る投資手法です。
まず理解しておきたいのは、この投資が「アパート投資」とは構造が大きく異なるという点です。
アパート投資は一棟買いによって複数の賃料収入を得る「分散型収益」が特徴ですが、初期投資額は数千万円から億単位になることもあります。一方、築古戸建ては一棟単位での“点の投資”ですが、価格帯は300万〜1,500万円ほどと比較的コンパクト。自己資金が少なくても始めやすいことが大きな魅力です。
メリット
- 高利回り:物件価格が安いため、賃料収入に対する利回りが10%超になる例も珍しくありません。
- リスク分散がしやすい:物件単価が低いため、複数戸への分散投資が現実的。
- 自由度が高い:外装・内装のリノベ、賃貸スタイルの柔軟性(ファミリー、シェアハウス等)
デメリット
- 再建築不可のリスク:建築基準法に適合しない土地では建替え不可=資産価値が大幅に制限される。
- 金融機関の評価が低い:築年数が古い物件は担保評価が低く、融資がつきにくい傾向に。
- 耐震・老朽化リスク:特に昭和56年以前の“旧耐震基準”物件は構造補強が必要な場合も。
とはいえ、これらのリスクは“知らずに買う”から問題になるのであって、“知った上で戦略的に選ぶ”ことで、むしろ大きな収益源となり得るのです。
第2章:投資成功の鍵は“エリア選定”にあり

築古戸建て投資の成否は、物件のスペック以上に「エリア」で決まる――これはもはや不動産投資の鉄則です。
首都圏ベッドタウン vs 地方中核都市
首都圏のベッドタウン(例:千葉・埼玉の郊外)では、通勤需要を背景に家賃相場が比較的安定しており、ファミリー層をターゲットとした戸建て賃貸が成立しやすいという特性があります。利回りは6〜8%程度が目安。
一方、地方中核都市(例:長野市、岡山市、熊本市など)では、物件価格がさらに低く抑えられる分、利回りが10〜15%に跳ね上がることも。しかし、空室リスクや賃料の下落リスクを見越した「出口戦略」がより重要となります。
狙うべきは「人口横ばい」×「インフラ維持」エリア
総人口の減少が進む中でも、自治体によっては「人口は横ばい」「移住者受け入れ政策に積極的」といった、投資価値のある地域が存在します。具体的には:
- 病院、学校、スーパーが徒歩圏に揃う
- 駅や幹線道路へのアクセスが確保されている
- 空き家対策やリノベ助成制度が充実している
こうしたエリアでは、ファミリー世帯や移住希望者のニーズとマッチすることで、築古でも安定した需要を確保できる可能性が高まります。
注意:市街化調整区域と再建築不可
築古投資において特に注意したいのが「市街化調整区域」や「再建築不可」物件です。前者は原則的に建物の建築が認められておらず、後者は解体後の建替えができないため、資産としての“再生可能性”が極端に低下します。
ただし、こうした物件が“極端に安い”理由でもあります。購入後の運用・出口戦略を徹底的に練り上げることで、ハイリスク・ハイリターンの投資対象として選ばれるケースもあるのです。
「人口」より「ニーズ」を見よ
最後に強調しておきたいのは、「人口統計だけに頼るな」ということ。
たとえ人口が減っていても、「そこに住みたい人」が存在すれば賃貸需要は成り立ちます。ニーズを掴み、適切なリノベで応える――この視点こそが、築古投資の本質だと言えるでしょう。
第3章:築古物件の見極め方と購入判断の基準

築古戸建て投資の最大のリスクは、言わずもがな「失敗物件をつかんでしまうこと」です。表面上は魅力的に見えても、蓋を開けてみたら構造に重大な欠陥があったり、再建築できなかったりと、見た目では判断できない“落とし穴”が潜んでいることも。
この章では、物件を選ぶ際に見るべき具体的なポイント、チェックすべき資料、そして購入判断の基準について丁寧に解説していきます。
1. 構造と築年数:木造でも30年以上は想定内
築古戸建ての多くは「木造住宅」です。木造=劣化が早いというイメージを持たれがちですが、実際には適切にメンテナンスされていれば、築40〜50年でも問題なく住める物件は少なくありません。
特に注目すべきは、1981年(昭和56年)に改正された「新耐震基準」。これ以前の物件は「旧耐震基準」とされ、耐震性が劣る可能性があります。購入前にはこの基準を必ず確認し、必要に応じて耐震補強を予算に組み込むべきです。
また、基礎の種類(ベタ基礎か布基礎か)、屋根の構造、柱の太さなどもプロ目線では重要な判断材料となります。素人判断では限界があるため、必ず専門家によるインスペクション(住宅診断)を依頼しましょう。
2. 配管・水回り:見えない部分こそ要チェック
築古戸建てで最も修繕費がかかるのが、水回りです。
特に注意が必要なのは、以下の3点:
- 給排水管の腐食や詰まり(鉄管→樹脂管への交換が必要なケースも)
- 浴室やトイレの防水性能劣化(漏水トラブルの原因に)
- キッチン設備の老朽化(水漏れや不衛生な配管構造)
水回りは“壁の中”や“床下”に隠れていることが多く、現地内見では見抜けないことがほとんどです。費用対効果の高いリノベを行うためにも、この分野の事前チェックは必須です。
3. 間取りと日当たり:リノベ前提での柔軟な目線を持つ
築古物件は、間取りが現代のライフスタイルに合っていないことが多いです(例:DKが狭い、和室ばかり、廊下が多いなど)。しかし、これはリノベーションによって価値を引き出す“伸びしろ”と捉えることができます。
ポイントは、柱の位置や壁の構造によって、どこまで改造が可能かを事前に見極めること。いわゆる「スケルトンリフォーム(骨組み残しの大改装)」が可能な構造かどうかも、投資価値を大きく左右します。
また、日当たりや風通しといった“感性的要素”も、入居者ニーズに直結します。現地内見時には、必ず日中の時間帯を選び、自然光の入り方なども確認しましょう。
4. 契約前に確認すべき書類と制度
購入判断においては、物件の法的な位置づけや、将来的な活用可能性を判断するための書類確認も非常に重要です。
- 登記簿謄本:所有者・面積・抵当権の有無などを確認
- 都市計画図:市街化調整区域か否か、再建築可否の判定
- 建築確認済証:建築当時の構造や工法が分かる貴重な資料
- 固定資産税課税明細書:土地・建物の評価額から将来の税負担を試算
さらに、空き家再生等推進事業や、各自治体が用意している助成金制度についても事前にチェックすることで、実質投資額を大きく抑えることが可能になります。
5. 実質購入価格を算出する
表面価格が安くても、リノベ費用・税金・仲介手数料・登記費用などが積み上がると、総投資額は思いのほか膨らみます。以下のような計算が現実的です。
【例】表面価格500万円の物件
- リノベ費用:250万円
- 諸費用(登記・仲介・税等):70万円
- 合計:820万円
→ 家賃収入が月6万円なら、表面利回りは約8.8%、実質利回りは6〜7%が目安
価格だけでなく「トータルコスト」で判断する視点を、常に持っておきましょう。
第4章:初心者でもできる「実践リノベーション戦略」

築古戸建て投資において、リノベーションは収益を最大化するための“心臓部”とも言える工程です。
しかし、ここで予算を使いすぎたり、見栄え重視の無駄な改装をしてしまえば、逆に利回りは大きく損なわれてしまいます。
この章では、初心者でも取り入れやすい実践的なリノベーション戦略を、成功パターン・失敗パターンの両面から紐解いていきます。
1. 「フルリノベ」vs「部分リフォーム」:収益性で比較する
よくある投資家の悩みが、「どこまでリノベすべきか?」という判断です。ここでは代表的な2パターンを比較してみましょう。
【A】フルリノベ(内外装すべて一新)
- 費用:200万〜400万円
- メリット:物件の魅力アップ、長期入居が期待できる、賃料を上げやすい
- デメリット:初期投資が重くなり、利回り低下リスク
【B】ポイントリフォーム(必要最小限の改装)
- 費用:50万〜150万円
- メリット:利回りが高まりやすい、早期回収が可能
- デメリット:古さが残り、入居者の印象次第では空室リスクも
初心者には、まずは【B】の「部分リフォーム型」を推奨します。実績を積んだ後、より大胆な【A】戦略にシフトするのが現実的でしょう。
2. 「水回り」と「外観」は最優先ポイント
数ある改装項目の中でも、優先順位が高いのは以下の2点です。
【1】水回り(キッチン・トイレ・バス)
- 清潔感・機能性は入居者選定に直結
- 古いだけで「汚い」「壊れそう」といったマイナス印象を与えやすい
- 最新機種でなくても、中古再生品やDIYアレンジで十分見栄えUP可能
【2】外観・玄関まわり
- ファーストインプレッションの重要性が極めて高い
- 外壁塗装、ポスト・表札の交換、照明設置など小さな工夫でも印象が激変
「中だけ良くても、外がボロボロでは意味がない」というのは、築古戸建ての鉄則です。
3. DIYと外注のバランスを見極める
「DIYでコストを抑えたい」というニーズは確かに多いですが、すべてを自分でやろうとするのは非効率です。
外注すべきもの
- 電気・ガス・水道などインフラに関わる工事(法律上も不可)
- 床の張替え、クロス施工など“仕上がり”が評価に直結する作業
DIYで対応可能なもの
- 庭の整備、ペンキ塗装、棚・収納の取り付け
- アクセントクロスや小物(照明・カーテン)の設置
施工のスピードと品質、そして入居者の印象に最も影響する部分には、積極的にプロの手を借りるべきです。
4. 補助金・助成制度の活用でコスト圧縮
「築古×リノベ」の最大の強みは、国や自治体による補助制度が使えるケースが多いことです。
主な支援制度(一例)
- 空き家活用補助金:最大100万円(対象エリア・要件あり)
- 断熱・耐震リフォーム補助:上限20万〜60万円
- 地方移住支援補助金:移住者受け入れに積極な自治体で最大200万円近いケースも
補助金の情報は、各自治体の公式サイトや「地域包括支援センター」等で公開されています。特に地方物件では、制度活用によって“実質利回りを2〜3%押し上げる”ことも可能です。
5. 入居者目線で「生活の質」を高める工夫を
最後に忘れてはならないのが、“住む人の満足度”を高める視点です。
例えば…
- 収納が少ない家なら、可動棚を増設
- 照明をダウンライト化して、おしゃれな雰囲気を演出
- 古い和室には「琉球畳」や「板張り風シート」で現代的アレンジ
見た目の「新しさ」よりも、暮らしやすさ・快適性が重視される時代。住まう人のイメージを想像しながらリノベ計画を立てることで、より高い家賃設定と長期入居が見込めるようになります。
第5章:収益化フェーズの設計|家賃戦略と出口戦略

築古戸建て投資は、「安く買って、うまく貸す」ことが基本戦略です。けれども、そこで終わりではありません。本当に大切なのは、「どのくらいの家賃で、どれだけの期間、どのように利益を回収するか」、さらに「いつ・どうやって出口(売却・相続)を迎えるか」を含めたトータル設計です。
この章では、家賃戦略・運用期間の設計・出口戦略の3つの柱から、収益化の全体像を描いていきます。
1. 家賃設定は「地域×物件力×ライバル次第」で決まる
収益の柱である家賃収入は、物件選びとリノベ内容によって大きく左右されますが、それ以上に重要なのが「エリア相場」とのバランスです。
家賃設定のポイント
- SUUMOやホームズなどの賃貸サイトで、同エリア・同スペック物件の賃料をチェック
- 新築風リノベ+駐車場付き戸建てであれば、相場の1〜2割増も可能
- 賃料を下げすぎると“安かろう悪かろう”と誤解され、逆に敬遠されるケースも
たとえば、地方都市で月5万円が相場のエリアでも、外観・内装をモダンに仕上げた物件なら6.5〜7万円での成約も可能です。家賃設定は単なる“足し算の収益”ではなく、ブランディングそのものといえるでしょう。
2. 利益回収期間を設計する:理想は7年以内
戸建て投資の収益モデルは、以下のようなシンプルな数式に落とし込めます。
【例】
- 初期投資総額:700万円(物件+リノベ+諸費用)
- 家賃:月6万円
- 年間収入:72万円
- ランニングコスト(税・保険・管理):年12万円
- 年間利益:60万円
→ 700万円 ÷ 60万円 = 約11.6年で回収
投資として魅力があるのは、7〜9年以内に回収し、その後は「家賃=ほぼ純利益」になる状態です。
回収期間が10年を超える場合は、以下のような戦略変更も検討すべきです。
- 家賃アップの余地がないか再評価
- リノベ費用の一部見直し
- 他用途(民泊、シェアハウスなど)での活用
3. 出口戦略を描ける人が、本物の投資家
築古戸建ては「買った瞬間に価値が下がる」と思われがちですが、出口を想定して運用することで、“売却益”まで得られるケースも珍しくありません。
主な出口戦略
戦略 | タイミング | メリット | 注意点 |
---|---|---|---|
売却 | 市況好転時 | 譲渡益で利回り+売却益が狙える | 所得税(譲渡税)の負担を事前試算 |
家族相続 | 相続税対策時 | 賃貸物件として評価額が下がる | 賃貸中の物件は売却しづらくなる |
自己居住 | 将来的に住む | 老後の住処としても活用可能 | エリア選定・住環境に注意 |
再販(flip) | 短期売却 | 投資額に利益を乗せて売却可能 | 築古市場の需給バランスに大きく左右 |
特に、リノベ済み物件は「住まいを探している一次取得層」に人気があるため、出口戦略として“再販で利益を取る”スタイルも成立します。
一方で、再建築不可物件や市街化調整区域の物件は出口が限られるため、購入時点での戦略設計が何より重要です。
4. 築古投資における「長期視点」の重要性
築古戸建て投資は、短期でキャッシュを稼ぐというよりも、「10年、20年と安定収益を生む資産を持つ」という感覚が近いです。
家賃収入だけでなく、相続・贈与・法人活用といった多角的な出口戦略を見越してこそ、真に“資産としての価値”が生まれるのです。
第6章:初心者が避けるべき失敗パターンと回避策

築古戸建て投資は、低コストで始められる分、“情報格差”による失敗リスクがつきまといます。
だからこそ大切なのは、他人の失敗から学び、自分の行動に反映させること。
この章では、ありがちな失敗パターンと、それぞれの回避策を具体的に紹介していきます。
失敗パターン①:「安いから買う」→ 再建築不可だった
ケース例:
ある投資初心者が、都内で500万円という破格の築古戸建てを購入。
しかし後からその物件が「再建築不可」であることに気づき、
売却も建て替えもできず、出口戦略が完全に閉ざされた。
回避策:
- 購入前に必ず「建築確認済証」や「都市計画図」で再建築可否を確認
- 不安な場合は市役所の都市計画課に問い合わせるのが確実
「掘り出し物=再建築不可」はよくある構図。法的制限は必ず事前確認を。
失敗パターン②:見積もりを甘く見てリノベ費用が大幅オーバー
ケース例:
築45年の物件を「軽く内装を直せばいけそう」と思って購入。
しかし実際には、配管が腐食し、水回りが全交換レベルだった。
結果、見積額の倍近いリノベ費用(約400万円)となり、利回りが半減。
回避策:
- 内見時点で「インスペクション(住宅診断)」を実施
- リノベ費用は、最低でも「50〜70万円のバッファ」を持つこと
- 配管や基礎は“見えない部分”だが、費用インパクトが非常に大きい
失敗パターン③:高めの家賃設定で空室が長期化
ケース例:
外観をおしゃれにリフォームし、周辺相場より2万円高い家賃で募集。
「これは絶対いける」と思っていたが、6ヶ月間空室が続き、
結局値下げ+初期費用ゼロ+フリーレントをつけてようやく成約。
回避策:
- 地元の不動産仲介会社に「想定家賃ヒアリング」を複数取る
- 家賃は「周辺相場の105%以内」が原則。欲張りすぎは逆効果
- 内装の良さより“駅距離・駐車場有無・ネット無料”が効くエリアもある
家賃は心理戦。「自分が住みたいか」ではなく「そのエリアで借りる人が何に価値を置くか」を見る。
失敗パターン④:業者選びを怠ってトラブル多発
ケース例:
知人の紹介で業者を選んだが、実際の対応がずさん。
工程の遅れ、見積もりの不透明さ、追加料金の発生などが続き、
最終的に工事のやり直しで損失が拡大。
回避策:
- 必ず複数社から見積もりを取得し、内容と項目を比較
- 「物件投資家向けの実績がある業者」を選定
- 工事契約時には、工程表・支払い条件・追加費用の条件を文書で残す
「安かろう悪かろう」を回避するためにも、“見える化”と“言語化”を徹底することが重要です。
まとめ:成功者は「想像力と準備力」でリスクをコントロールしている
築古戸建て投資における成功と失敗を分ける最大の違いは、
「見えないリスクをどれだけ事前に可視化できていたか」
に尽きるといえるでしょう。
物件そのものの魅力よりも、
- エリア選定
- リノベ戦略
- 管理体制
- そして出口の描き方
こうした“総合力”が問われるのが築古戸建て投資です。
第7章:具体的な収支モデルと実践シミュレーション
築古戸建て投資は、成功すれば年利10%超の高収益も可能とされますが、
それはあくまで「計算と実行が正しく行われた場合」に限られます。
この章では、典型的な成功パターンと注意すべきリスク込みのシミュレーションを通じて、
数字の裏にある“現実”を具体的に紐解いていきます。
モデルケース①:郊外の築40年戸建てを賃貸運用
項目 | 金額 |
---|---|
物件価格 | 400万円 |
リノベーション費用 | 180万円 |
諸費用(登記・仲介等) | 60万円 |
総投資額 | 640万円 |
月額家賃 | 60,000円 |
年間家賃収入 | 72万円 |
管理・税コスト | 年間10万円 |
実質年間利益 | 約62万円 |
利回り(実質) | 約9.7% |
投資回収期間 | 約10年 |
解説:
このような「600万円台で始める築古投資」は、地方都市や郊外ベッドタウンで現実的に多く見られる事例です。
リノベの工夫や家賃設定次第で、利回り10%前後を狙えるバランスの良いモデルと言えるでしょう。
モデルケース②:再建築不可の物件を格安取得してflip(転売)
項目 | 金額 |
---|---|
物件価格 | 250万円(再建築不可) |
リノベーション費用 | 100万円 |
諸費用 | 50万円 |
総投資額 | 400万円 |
売却価格 | 530万円 |
売却益(税前) | 130万円 |
所要期間 | 4ヶ月 |
解説:
再建築不可物件は“住む”よりも“売る”戦略に適しています。
購入から数ヶ月での再販(flip)で利益確定するスタイルは、資金回転効率が高く、法人投資家に人気です。
ただし、買い手が限られるため、「出口戦略を確保してから購入する」ことが絶対条件です。
モデルケース③:ファミリー層向けに庭付き戸建てを改装・高賃料化
項目 | 金額 |
---|---|
物件価格 | 600万円 |
フルリノベ費用 | 300万円 |
諸費用 | 80万円 |
総投資額 | 980万円 |
月額家賃 | 95,000円 |
年間家賃収入 | 114万円 |
管理・税コスト | 年間15万円 |
実質年間利益 | 約99万円 |
利回り(実質) | 約10.1% |
投資回収期間 | 約9.9年 |
解説:
郊外でもファミリー向けのニーズがあるエリアでは、「3LDK以上・駐車場・庭付き」などの要素が
しっかりと賃料アップにつながります。初期投資はやや大きいものの、長期的な収益安定性に優れるのが強みです。
終わりに:築古戸建て投資は「時間を味方にする資産形成」
築古物件の投資には、確かにリスクも多く、手間もかかります。
ですがその分、価格競争が少なく、情報収集と戦略次第で**「利益率の高い資産」を持てる数少ない投資手法**とも言えます。
そして何より、
- 一度軌道に乗れば「月5万〜10万円」の安定収入
- 売却しても再利用できる実物資産
- 家族や子どもに引き継げる将来資産
という形で、“目に見える豊かさ”が積み上がっていきます。
まとめ:築古戸建て投資の5つの要点

- 初期コストを抑えても、見えないリスクには備えるべし
- エリア選定は「将来の人口とインフラ」に注目
- リノベは“暮らしやすさ”と“コスト回収”の両立がカギ
- 家賃戦略と出口戦略の設計が、収益を大きく左右する
- 何より大切なのは、投資を「学びのステップ」にする姿勢

ファイナンス専門ライター / FP
資産運用、節税、保険、財産分与など、お金に関する幅広いテーマを扱うファイナンス専門ライター。
金融機関での勤務経験を活かし、個人投資家や経営者向けに分かりやすく実践的な情報を発信。特に、税制改正や金融商品の最新トレンドを的確に捉え、読者の資産形成に貢献することを得意とする。