
インフレ、年金不安、物価上昇──。日々の暮らしの中で感じるお金の“目減り感”は、以前よりも確実に実感を伴うものになってきました。特に30代以降の働き盛り世代にとって、「今の収入だけで将来に備えられるのだろうか?」という疑問は、もはや他人事ではありません。
日本の家計は、長引く低金利と物価上昇の狭間で、「資産を貯める」だけではなく「資産を育てる」ことの重要性が増しています。そのような背景の中、着実に注目を集めているのが「不動産投資」という選択肢です。
とりわけ、会社員が副業として不動産投資に取り組むケースは年々増加傾向にあります。副業解禁の流れ、国の推進政策、老後2000万円問題など、制度面と心理面の両方が後押ししているのが現状です。
一方で、「会社にバレない?」「本業との両立は可能?」「ローンを組めるのか?」「節税って本当にできる?」といった不安や疑問が尽きないのも事実でしょう。
本記事では、会社員が副業として不動産投資を始めるにあたり、知っておくべき制度・ルール・戦略を包括的に解説します。単なる理想論ではなく、現実の壁やリスクも含めた“実行可能な知恵”を、初心者にもわかりやすく丁寧にお伝えしていきます。
第1章:サラリーマンが副業で不動産投資を始める社会的背景

平均年収と可処分所得の推移:30〜50代の「貯まらない現実」
国税庁の「民間給与実態統計調査(令和5年)」によれば、日本の会社員(正規雇用者)の平均年収は約508万円。しかし、これがそのまま自由に使えるわけではありません。税金、社会保険料、住宅ローン、教育費──可処分所得は、年々その割合を減らしているのです。
さらに総務省の家計調査によると、30代〜50代の世帯において、毎月の貯蓄可能額(黒字額)は年々減少傾向にあり、貯金ができない“中流層”が急増しています。
こうした現実の中、会社員が収入の柱をもう一本持とうとするのは、むしろ自然な流れではないでしょうか。
投資信託・株式と不動産の“性格の違い”
資産運用というと、まず思い浮かぶのは株式投資や投資信託かもしれません。たしかにこれらは手軽で、少額から始められるメリットがあります。しかし、日々の価格変動や世界情勢に敏感に反応するため、精神的に不安定になりがちです。
一方、不動産は“現物資産”であるため、価格のブレが小さく、長期的な運用に向いています。さらに、自分の意思で管理や改善ができるため、「経営的な感覚」が求められる点も、サラリーマンのビジネススキルと親和性があるのです。
不動産投資の最大の特長:レバレッジと現金フローの同時獲得
不動産投資最大のメリットは、「レバレッジ(他人資本の活用)」が効くという点です。つまり、自分の手元資金が少なくても、銀行などの融資を活用することで、数千万円規模の資産を動かすことが可能になります。
しかも、うまく運用できれば、家賃収入として毎月の“現金フロー”が得られるため、株式のように売却益を待たずにキャッシュインを得ることができる。これは、給与とは別の“定期的な副収入”を求める会社員にとって、大きな魅力となっています。
第2章:副業としての不動産投資は法的に問題ないのか?
副業ガイドラインと就業規則の読み解き方
「副業をしたいが、就業規則が気になる」という声は多いでしょう。結論から言えば、多くの民間企業において、不動産投資は“副業禁止の対象外”として扱われることがほとんどです。
政府が2018年に発表した「副業・兼業の促進に関するガイドライン」では、副業は原則容認の方向に進んでいます。ただし、「企業の信用を損なう行為」「本業への支障」「機密保持違反」などを避けることが条件です。
そのため、不動産投資が就業規則に抵触しないかを確認するには、「営利活動」とみなされるかどうか、そして「業務時間外に行われているか」がポイントになります。
国家公務員法・地方公務員法の副業制限とは?
公務員に関しては、民間とは異なり厳格なルールが設けられています。たとえば国家公務員法では「許可なき副業を禁止」と明記されており、基本的には営利目的の不動産投資も制限対象です。
ただし、「家賃収入が年収20万円以下」かつ「個人的な資産管理の範囲内」であれば、申告・届出により可能となるケースもあります。地方公務員法も同様で、所属自治体によって運用が異なるため、事前確認は必須です。
社内規定と照らし合わせるべき「営利目的」の定義
会社によっては、「業として継続的に収入を得る活動は副業に該当」と規定しているケースもあります。不動産投資で複数戸を所有し、年間数百万円の収入があると、業と見なされる可能性も出てくるのです。
この点で重要なのは、「不動産経営」という言葉に対する会社側の解釈と、現実の運用実態のギャップを埋めることです。定量的な基準(戸数・規模・稼働率など)が明文化されていない場合は、事前の労務部門への相談が有効です。
税務上の開業届提出・青色申告の条件とメリット
税務面では、不動産投資による所得が年間20万円を超える場合は、確定申告が必要になります。また、開業届を提出し、青色申告を選択することで、最大65万円の控除を受けることが可能になります。
青色申告のメリットはそれだけではありません。赤字を3年間繰り越せる、家族への給与を必要経費にできるなど、多くの節税効果があります。会社員が不動産投資を本格的に副業として運営するならば、この制度の活用は必須といえるでしょう。
不動産投資を始めるうえで多くの会社員が最も気にするのが、「副業が会社にバレるのでは?」という問題です。これが心理的な大きなハードルとなって、なかなか一歩を踏み出せない方も少なくありません。しかし、実際に何が原因で“バレる”のかを正しく理解し、事前に対処しておくことで、そのリスクは大きく軽減することができます。
住民税の「特別徴収」と「普通徴収」選択の手続き
副業が会社にバレる最大の要因の一つが「住民税の通知」です。会社員の住民税は通常、「特別徴収」といって、会社が給与から天引きして納付しています。ところが副業で収入が発生すると、確定申告によってその所得が住民税額に上乗せされ、会社が不審に思う可能性が出てきます。
このリスクを回避する方法が「住民税の普通徴収(自分で納付)」です。確定申告時に「給与所得以外は普通徴収を希望」にチェックを入れることで、副業分の住民税は会社に通知されず、自身で納付する形式になります。
ただし、自治体によっては自動的に特別徴収になるケースもあり、絶対に会社にバレないという保証はありません。市区町村の窓口に事前に確認することをおすすめします。
銀行融資情報・信用情報(CIC/JICC)の連携
もう一つのバレる可能性として、銀行融資を受ける際の情報開示があります。不動産を購入する際、多くの人は住宅ローンやアパートローンを組みますが、この情報が信用情報機関(CICやJICC)に登録されます。
基本的に、会社側がこれらの情報にアクセスすることはありません。しかし、社内ローンを利用している場合や、勤務先経由で金融機関と取引がある場合は、情報が交差するリスクがゼロとは言い切れません。
同僚からの告発・SNSでのうっかり発信も要注意
意外と見落とされがちなのが、「人づてに知られる」というケースです。例えば、同僚との何気ない会話の中で不動産投資について話してしまったり、SNSで物件購入の情報をうっかり投稿したりすると、そこから情報が伝わることがあります。
副業が禁止されている場合、こうした内部リークから懲戒の対象になるリスクもあるため、情報管理は慎重すぎるくらいがちょうどよいでしょう。
重要なのは「合法的な隠し方」ではなく「信頼を損なわない透明性」
最も大切なのは、会社にバレないよう“隠す”ことではなく、「信頼を損なわない透明性を持って行動すること」です。明確な就業規則がある場合は、それに従うのが基本ですし、不明瞭な場合は事前に人事や総務に相談する姿勢が望ましいです。
不動産投資は決して後ろめたいことではありません。本業に支障がなく、誠実な運営がされていれば、将来的に理解される土台にもなり得るでしょう。
第4章:初心者会社員に向く不動産投資のスタイルとは?

「どんな物件を選べばいいのか?」これは初心者が最初につまずきやすいポイントです。不動産投資は千差万別であり、投資家の目的や資金力、ライフスタイルによって最適解が異なります。ここでは、会社員にとって現実的かつ負担の少ない投資スタイルを整理しておきましょう。
区分マンション、戸建て、アパート一棟投資の違い
- 区分マンション:もっとも一般的で手軽に始めやすい。価格帯も抑えめで、都心部で需要が安定している。
- 戸建て投資:築古戸建てを安価で購入し、リフォームして貸し出す手法。地方や郊外では高利回りも狙える。
- アパート一棟投資:資金や融資枠が大きく必要だが、収益性と運用の柔軟性は最も高い。
初心者にとっては、最初の一歩として「区分マンション」や「戸建て」がリスクを抑えやすくおすすめです。
新築vs中古/都市vs地方/管理委託vs自主管理
- 新築物件は管理が楽で入居率が高い反面、価格が高く利回りが低め。
- 中古物件は価格が抑えられ、利回りは高いが、修繕費や管理リスクが大きい。
- 都市部は安定した賃貸需要がありリスクが少ないが、利回りは控えめ。
- 地方は高利回りが期待できるが、空室リスクと流動性に課題がある。
- 管理委託は時間と手間を軽減できるが、費用がかかる。
- 自主管理はコストが抑えられるが、トラブル対応の負担は大きい。
実質利回りとは何か?計算例で理解する
「利回り10%」という言葉に惹かれて物件を購入するのは危険です。ここでいう“利回り”が「表面利回り(年間家賃収入 ÷ 物件価格)」なのか、「実質利回り(家賃収入 − 諸経費)÷ 物件価格」なのかで、投資のパフォーマンスは大きく変わります。
たとえば、年間家賃収入が120万円、物件価格が1,500万円であっても、管理費・修繕費・空室リスクなどを差し引くと、手元に残るのは90万円程度ということもあります。つまり、表面利回り8%でも、実質は6%以下になるケースもあるのです。
築年数と融資年数、耐用年数による税務・資金繰りへの影響
金融機関は物件の「築年数」と「耐用年数」によって、融資期間や金利を変えます。木造は22年、鉄筋コンクリートは47年という法定耐用年数を超えると、融資が付きづらくなる傾向があります。
また、税務上の減価償却期間にも影響し、築古物件を短期間で償却して節税する戦略などもあります。ただし、その分キャッシュフローが圧迫される可能性もあるため、収支計画は慎重に立てる必要があります。
第5章:会社員と不動産投資、実際に両立できるのか?
副業と本業の両立は、多くの会社員が不安に感じる部分です。「忙しくて管理できない」「トラブル対応の時間がない」──たしかに本業に支障が出ては本末転倒ですが、実際に両立している人は多数存在します。
本業と副業の時間管理:何にどの程度時間がかかるのか
最も時間がかかるのは「物件探し」と「購入前後の手続き」です。購入後は、管理会社に業務を委託すれば、毎月の対応は家賃振込の確認程度で済むことが多いです。
ただし、突発的な修繕対応や退去処理などは発生する可能性があり、その都度判断が求められるため、最低限の知識と体制は必要です。
自主管理と委託管理のリアルな負担比較
- 自主管理の場合:月1〜2時間ほどの手間がかかるが、コストは最小。
- 委託管理の場合:管理費(通常は賃料の3〜5%)が発生するが、時間的な余裕が確保できる。
不動産投資を「完全な副業」として成立させるには、管理をアウトソースする体制づくりがカギとなります。
トラブル対応/家賃督促/空室対策は「誰が」「いつ」「どこまで」やる?
委託管理であっても、すべてを任せきりにするのは危険です。入居者対応の最終責任はオーナーにあり、管理会社と密に連携しながら、「どの範囲を任せ」「どこからは自分が判断するか」の線引きを明確にしておくことが重要です。
ITツールや管理会社を活用した「実質自動化」の方法
最近では、家賃回収、空室募集、設備管理などを一括で管理できる不動産投資向けのクラウドツールも登場しています。月額数千円程度で導入でき、スマホひとつで管理が完結するケースも。
また、信頼できる管理会社を見つけることで、オーナーは“経営判断”に集中し、実務はプロに任せるというスタイルも確立できます。
理論だけでは伝わらない“リアル”がある。実際に不動産投資を副業として行っている会社員たちのストーリーには、教科書には載っていない学びが詰まっています。ここでは、成功例だけでなく、失敗から得られた教訓にも焦点を当てます。
ケース①:会社員歴20年・45歳男性が区分マンション投資で副収入+120万円
都内在住・金融系企業勤務のHさん(45歳)は、年収800万円の会社員。子どもの大学進学を控え、「老後の収入源を今から育てたい」との思いで不動産投資を検討しました。
最初に購入したのは、都心の駅近ワンルームマンション(築18年・2,100万円)。頭金は300万円、残りは金融機関からのローンで調達。
購入後すぐに入居が決まり、家賃は月10万円。管理費・修繕積立金・ローン返済などを差し引いても、年間約120万円のキャッシュフローが得られています。
「“小さな1戸”がもたらす安心感は大きい。副業として無理なく続けられるのが魅力です。」
ケース②:地方在住50代・築古戸建てで利回り14%を実現
地方都市に住むMさん(53歳・製造業勤務)は、実家の空き家を相続したのをきっかけに、築古戸建ての投資に目覚めました。
相場より安く手に入れた築40年の平屋住宅(購入額280万円)をDIYと業者でリフォームし、月額4万円で賃貸に。リフォーム費用を含めた総投資額は約400万円、年間家賃収入は48万円。実質利回りは12%を超えています。
「安く仕入れて価値をつけるのが戸建て投資の醍醐味。地方でも需要はあると実感しています。」
ケース③:利回り12%に惹かれて購入、空室に泣いた30代営業職
一方で、苦い経験をした例もあります。Nさん(38歳・IT企業勤務)は、不動産投資セミナーで紹介された地方都市の新築アパート(1棟8戸)にフルローンで投資。
購入当初は満室でしたが、半年後に一気に3戸が退去し、空室が埋まらず、利回りは大きく低下。ローン返済が重荷となり、現在は売却を検討中です。
「“利回り”に目がくらんで、出口戦略や需要の見極めを怠ってしまったのが反省点です。」
成功の鍵は「情報源の質」と「初動の慎重さ」
共通して言えるのは、成功者は物件選びや融資条件を冷静に分析し、信頼できる専門家や情報源を活用している点です。
反対に、失敗する人は“誰かの成功体験”をそのまま信じてしまい、自分で考え抜くプロセスを省略してしまう傾向があります。
第7章:副業不動産投資で得られる節税メリットと盲点
「不動産投資=節税」というイメージは根強いものがあります。たしかに上手く活用すれば所得税・住民税の圧縮が可能です。しかし、過度な期待や誤った理解はリスクを伴います。ここでは、節税の仕組みと注意点を整理します。
減価償却で「課税所得」を圧縮する仕組み
建物は時間の経過とともに価値が減る「減価償却資産」として扱われます。不動産投資では、この減価償却費を経費として計上することで、帳簿上の利益を減らし、課税所得を抑えることが可能です。
例えば、2,000万円の中古マンションを購入し、そのうち建物部分が1,200万円だった場合、築年数によっては数年で全額を償却できます。これが、給与所得と損益通算できる場合、税金が大きく減るのです。
青色申告特別控除・赤字の損益通算・法人化のタイミング
個人事業主として「青色申告」を選択することで、最大65万円の特別控除が受けられます。また、不動産所得が赤字であれば、給与所得と損益通算して税金を還付される可能性も。
さらに事業が軌道に乗れば「法人化」によって、社会保険料削減・役員報酬の活用・消費税還付など、節税メリットが広がります。
過度な節税志向のリスク:税務署からの指摘事例
しかし、近年は税務署の目も厳しくなっており、「節税目的」と見なされる不自然な取引には調査が入ることも増えています。特に「中古物件×短期償却」スキームに対しては、実態を伴わない場合に否認されるリスクが高いです。
帳簿をしっかり整備し、税理士などの専門家と連携を取ることが欠かせません。
「節税だけが目的」ではなく「資産保全+拡大」が本質
節税はあくまで手段であり、不動産投資の本質は「安定した資産形成」にあります。税金を減らすことだけに執着すると、収益性や流動性の低い物件に手を出してしまう危険も。資産保全、現金収入の確保、そして拡大戦略を一体的に考える視点が大切です。
第8章:絶対に陥ってはいけない5つの誤解と失敗パターン
不動産投資は魅力的な反面、“見た目以上に奥が深い”世界でもあります。ここでは、副業で不動産投資に取り組む際に避けるべき典型的な誤解と失敗を5つに絞って紹介します。
1. 「会社にバレなければ何でもOK」という認識
表向きのリスクだけに目を向け、「バレなきゃいい」という考え方は、長期的に見て非常に危険です。税務や法令、社内規定をしっかり把握し、正しく対処する姿勢が不可欠です。
2. 節税・融資だけを目的とした不動産取得
「節税になるから」「融資が通るから」といった理由だけで物件を購入すると、キャッシュフローがマイナスになりやすく、資金繰りに苦しむケースも多いです。あくまで収益性・継続性を重視すべきです。
3. 空室率や修繕費など“負の前提”を無視した楽観シミュレーション
表面利回りや想定家賃だけを根拠に購入を決めると、実際の運用で「こんなはずじゃなかった…」という事態に。リアルな収支シミュレーションは必須です。
4. 無理なフルローンでキャッシュフロー赤字
フルローンが組める=投資可能、というわけではありません。金利変動、空室リスク、退去時のリフォーム費など、不測の支出に備えた余剰資金の確保が重要です。
5. 投資初心者が“セミナー商法”に引っかかるケース
「不労所得」「年収1,000万円プレイヤー」などの甘い言葉に誘われ、知識が乏しいまま高額物件を購入してしまう人も。冷静な判断力を持ち、情報の質を見極めましょう。
第9章:会社員でもできる「小さく始めて大きく育てる」戦略
副業としての不動産投資において、最も重要なのは「いかにして安全にスタートを切るか」です。ここでは、初心者でも実践できる堅実な戦略を紹介します。
最初は自己資金で「リスクを限定した一件」から
最初の一件は「学びの教材」として位置づけるのが理想です。たとえば、1,000万円未満の中古区分マンションで、キャッシュフローが黒字になる物件。まずは小さな成功体験を積むことが自信につながります。
物件比較・現地視察・投資仲間からの学びが成功を左右する
物件選びは机上のデータだけでなく、実際に足を運んで周辺環境を体感することが重要です。また、投資家コミュニティや勉強会に参加することで、リアルな情報を得られる機会が増えます。
知識→行動→経験→改善という「投資サイクル」を回す
1件目で終わらず、経験から学び、改善しながら次に活かす。この“投資サイクル”を回せる人が、長期的に成果を積み重ねていきます。
継続的な情報収集:信頼できるメディア・専門家との付き合い方
信頼性の高いメディア(たとえば当メディア「資産運用アカデミア」)を定期的にチェックし、知識をアップデートし続ける姿勢が不可欠です。また、税理士・不動産会社・管理会社など、プロとのパートナーシップ構築も成功の鍵となります。
最終章:副業不動産投資は“手段”であって“目的”ではない
ここまで、副業としての不動産投資を会社員が始めるにあたり、押さえておくべきポイントを多角的に見てきました。
副業解禁の流れ、インフレと実質所得の減少、そして年金不安や社会保険料負担の増加──。こうした環境変化のなかで、「会社からの給与一本で将来を支える」ことに疑問を抱き、“第二の収入源”として不動産投資を考える会社員が増えているのは、ごく自然な流れでしょう。
しかし一方で、私たちが忘れてはいけないのは、「不動産投資それ自体が目的ではない」ということです。
資産形成の本質は「人生設計と選択肢の拡大」
資産を築くという行為の本質は、通帳の数字を増やすことではありません。それは、自分自身や家族にとっての「より良い選択肢を持てる自由」を増やすための行動なのです。
・もし仕事がつらくなったら、無理せず転職できる
・子どもに好きな進学先を選ばせてあげられる
・介護や看病で時間を必要とするときに、休職や時短を選べる
・人生後半を、自分の価値観に沿った時間の使い方ができる
こうした“選択の自由”を得るためにこそ、資産形成は存在します。
本業+副業の相乗効果がもたらす「新しいキャリア像」
不動産投資を通じて経営や税務に触れることは、本業にもプラスの影響を与える可能性があります。投資をすることで、金融リテラシーが高まり、資産・負債・収支の関係に敏感になる。そうなれば、日々の業務でも“コスト感覚”や“経営目線”が自然と養われていくのです。
副業が本業を邪魔するどころか、むしろ本業を強化し、新たなキャリア形成のきっかけになる──そんな未来だって描けるのではないでしょうか。
不動産は「自分に合った設計」ができる柔軟な投資
株式投資や暗号資産と異なり、不動産は「自分で戦略を組み立てられる余地」が非常に大きな投資手法です。
・ローンをどこから借りるか
・物件の立地をどう選ぶか
・管理方法をどう設計するか
・法人化するか、個人で進めるか
これらすべてに自分の意思が反映されるからこそ、「合う・合わない」が明確に分かれるものでもあります。
正解は一つではありません。自分の価値観と目標にフィットする形で設計できる点が、不動産投資の大きな強みです。
最初の一歩が未来を変える。「動く人」にだけ、チャンスは訪れる
どんなに情報を集めても、どれほど理解が深まっても、「行動しなければ、何も変わらない」というのが投資の現実です。
もちろん、すぐにフルスロットルで走り出す必要はありません。最初は小さな区分マンションを一戸買うだけでも良いのです。その小さな一歩こそが、未来を変える大きな原動力になります。
まとめ:副業不動産投資という“知的な生き方”
不動産投資は、単にお金を増やすだけの手段ではありません。
それは、自分の未来を“経営”していくという、非常に知的で責任ある生き方の一つです。毎月のキャッシュフローを組み、トラブルに備え、税務と向き合い、リスクをヘッジする──。その過程すべてが、あなたという人間を一段階、進化させてくれるものだと私は信じています。
資産形成とは、単なる“貯金”ではありません。“生き方の質を上げること”です。
さあ、最初の一歩を踏み出しましょう。

ファイナンス専門ライター / FP
資産運用、節税、保険、財産分与など、お金に関する幅広いテーマを扱うファイナンス専門ライター。
金融機関での勤務経験を活かし、個人投資家や経営者向けに分かりやすく実践的な情報を発信。特に、税制改正や金融商品の最新トレンドを的確に捉え、読者の資産形成に貢献することを得意とする。