「事業投資って一体なに?」「会社経営者の話では?」と疑問を持つ方も少なくないでしょう。実際、かつては“限られた富裕層だけの世界”という印象が強かったこの分野。しかし今では、一般の会社員や個人事業主であっても、自分のライフスタイルや資産状況に合わせた“身の丈の事業投資”を選べる時代になっています。
クラウドファンディング型の少額参加型から、事業承継やフランチャイズといった運営参加型、さらにはスタートアップへのエンジェル出資まで──そのスタイルは驚くほど多彩。重要なのは、「何に投資するか?」だけでなく、「どのように関わるか?」を自分で選べることです。
本記事では、代表的な事業投資の種類を分類し、それぞれの特徴やリターン、リスクを分かりやすく比較解説。あなたの「投資の目的」と「人生の優先順位」に合わせて、最適なスタイルを選ぶための“地図”となる情報をお届けします。
第1章:事業投資とは?──「株式」や「不動産」とは異なる“実体に関わる”投資の魅力

「投資家=オーナー」になるとはどういうことか
株式投資では、上場企業のごく一部の株式を保有することで「出資者」にはなれますが、実質的な経営には関与できません。一方、事業投資の世界では、あなたが出資した資金が、直接その事業の“血液”となり、仕入れや人件費、新規開発、広告などの運営資金に使われます。
つまり、あなたは単なる資金提供者ではなく、「ビジネスの一部を動かす“共同オーナー”」としての立場を持つことになるのです。この関係性の密接さこそが、事業投資の最大の醍醐味であり、難しさでもあります。
収益の仕組み:キャピタルゲイン/インカムゲイン/その他のリターン
事業投資から得られるリターンは主に以下の3つに分類されます。
- キャピタルゲイン:会社の価値が上がり、あなたの出資分が数倍に膨らむ(IPO・M&Aなどによる売却益)
- インカムゲイン:経営が順調であれば、配当や報酬という形で定期的な利益を受け取れる
- 非金銭的リターン:ネットワークの拡大、経営スキルの向上、社会的意義のある事業への関与など、“お金では買えない価値”
投資としての魅力はもちろん、人生を豊かにする“副次的な恩恵”も、事業投資ならではの魅力だといえるでしょう。
投資する“相手”は「人」と「ビジネス」であるという視点
事業投資では、財務数値だけではなく「誰が事業を動かすのか?」が成否を大きく左右します。つまり、「ヒト」への信頼、「ビジネスモデル」への共感、さらには「市場や業界トレンド」への理解が求められる投資です。
投資判断が“書類の裏付け”だけでは完結しない。だからこそ難しく、だからこそ面白いのが、事業投資なのです。
第2章:図解でわかる!事業投資の全体マップ

分類A:関与度の違い──あなたは“どこまで関わる”?
- 完全関与型:自分自身が事業運営の中心に立つ(例:自営型、事業承継)
- 助言型:経営方針に関与しつつ実務は任せる(例:共同出資、パートナー型)
- パッシブ型:資金提供のみで基本的には運営に関与しない(例:ファンド型、クラファン型)
関与度が高いほど、収益性もコントロール性も高まりますが、時間的・精神的な負担も大きくなる傾向があります。
分類B:投資ステージ──事業の“成長段階”を見極める
- シード期:まだアイデア段階、ハイリスク・ハイリターン
- アーリー期:製品・サービス化はされているが、売上はこれから
- ミドル期:一定の収益が安定し、スケール段階に入った成長期
- 成熟期:黒字経営、シェア確立済。安定志向の投資対象に最適
ステージが早ければ早いほどリターンの振れ幅が大きく、後期に行くほど安定性が高まります。
分類C:投資単位──「1万円から」「1億円まで」幅広い選択肢
- マイクロ投資(1万円〜50万円):クラウドファンディング、少額匿名組合など
- ミドルレンジ投資(50万円〜1,000万円):フランチャイズ、中規模共同出資
- ラージスケール投資(1,000万円〜億単位):企業買収、自営型の立ち上げ等
予算に応じた選択肢が豊富なことも、事業投資の柔軟性の高さを表しています。
分類D:収益構造──“どう稼ぐか”で投資スタイルが変わる
- キャピタルゲイン型:企業価値の上昇でリターンを得る
- インカムゲイン型:利益から分配(配当・報酬)を得る
- ハイブリッド型:売却益と配当を併用した設計
投資期間、期待リターン、出口戦略の構築などに影響するため、自身のニーズと合致する構造か見極めることが重要です。
【図解マトリクス】初心者向け分類表:コスト×リスク×リターン×関与度
(※文中には、以下のような4軸チャートを想定して挿入)
- 横軸:関与度(低←→高)
- 縦軸:期待リターン(低←→高)
- サイズ表記:初期コスト
- 色分け:投資リスクの大小
このように、事業投資は“分類”によって、自分に最適なスタイルを視覚的に把握できる投資なのです。
第3章:代表的な「事業投資」の7つの種類と詳細解説

事業投資にはさまざまな形が存在しますが、ここでは中でも代表的で、かつ個人投資家でも検討可能な7タイプをピックアップ。関与度、初期資金、期待リターンなどの観点から、その特徴と注意点を掘り下げて解説します。
1. スタートアップ投資(エンジェル・VC型)
■ 概要
アイデア段階〜初期成長段階にある企業に対し、資本を提供する投資手法。未上場企業への出資となり、IPOやM&Aによる「株式売却益(キャピタルゲイン)」が主なリターンです。
■ 特徴
- 【初期投資額】:100万円〜1,000万円(クラウド型なら10万円〜可能)
- 【関与度】:低〜中(関与型も存在)
- 【リターン】:最大数十倍以上の可能性あり
- 【リスク】:倒産による全損リスクが高い
■ ポイント
「失敗するのが当たり前」という前提で、分散投資を前提に。プロのVC(ベンチャーキャピタル)やエンジェル投資家と情報共有できるネットワークが鍵になります。
2. フランチャイズ型事業投資
■ 概要
コンビニや飲食チェーンなど、既存ブランドのノウハウを活用し、自ら経営者として店舗運営を行う事業投資スタイル。中高年のセカンドキャリアとしても人気。
■ 特徴
- 【初期投資額】:500万円〜3,000万円(業種・物件による)
- 【関与度】:高(オーナー兼実務担当またはマネジメント主体)
- 【リターン】:年利10〜30%を狙えるケースも
- 【リスク】:業態・立地・人材の影響大。労務リスクも見逃せない
■ ポイント
「仕組みの再現性が高い」反面、「実行力に依存する」側面も強い。業界分析や現場見学、加盟店オーナーの生の声を聞いてから検討すべき。
3. 事業承継投資(中小企業買収)
■ 概要
地方の黒字中小企業が後継者不在に悩むケースが増加する中で、経営権を引き継ぎつつ出資する事業投資モデル。すでに確立された収益構造を活用可能。
■ 特徴
- 【初期投資額】:数百万円〜数千万円(M&A仲介など活用)
- 【関与度】:中〜高(自ら代表になるケースあり)
- 【リターン】:安定したインカム、+成長戦略次第で高リターンも
- 【リスク】:人材流出・顧客離れ・業界変化への対応が課題
■ ポイント
経産省の「事業引継ぎ支援センター」など、公的支援も充実。自己資金だけでなく、政策金融公庫などの創業融資と組み合わせたレバレッジ戦略も可能。
4. 共同経営型(パートナー出資型)
■ 概要
すでに事業を立ち上げている起業家や経営者とパートナーを組み、資金+知見+ネットワークなどの“経営資源”を提供してリターンを得るスタイル。いわば「経営の伴走者」としての投資。
■ 特徴
- 【初期投資額】:100万円〜1,000万円(契約次第)
- 【関与度】:中(アドバイザー・取締役・顧問などの役割)
- 【リターン】:配当+キャピタル、または事業報酬
- 【リスク】:経営者との信頼関係が崩れた場合の損失が大きい
■ ポイント
このタイプでは“ヒト”への目利き力が問われます。資金だけでなく「自分の時間や経験値」をシェアする覚悟と、それに応じたリスク・リターン構造をきちんと設計する必要があります。
5. ファンド型事業投資(PE・中小企業ファンドなど)
■ 概要
プライベートエクイティ(PE)ファンドや中小企業再生ファンドなど、プロの運用者に資金を託し、間接的に事業投資へ関与するスタイル。個人でも参加可能なものも増加中。
■ 特徴
- 【初期投資額】:100万円〜(ファンドにより大きく異なる)
- 【関与度】:低(完全パッシブ)
- 【リターン】:年利5〜15%前後(ファンドにより差異)
- 【リスク】:運用者の判断次第で成否が分かれる
■ ポイント
事業投資に興味はあるが「直接関与したくない」「知見がない」方に向いた選択肢。金融庁登録済みの適格運用者か、分別管理体制なども確認必須です。
6. クラウドファンディング型事業投資(マイクロ型)
■ 概要
インターネット上のプラットフォームを通じて、全国の個人が少額ずつ出資できる新しい形の事業投資。飲食業、農業、IT事業など多様な案件が並びます。
■ 特徴
- 【初期投資額】:1万円〜数十万円
- 【関与度】:非常に低(パッシブ投資)
- 【リターン】:配当、または商品提供、出資金の返還+利息など
- 【リスク】:情報非対称性/イグジット不透明性
■ ポイント
「まずは経験してみたい」という初心者にはうってつけ。ただし、提供情報が少ないケースもあり、“感情”だけでなく“数字”や“仕組み”にも注目する姿勢が求められます。
7. 自分自身の事業立ち上げ(セルフ起業投資)
■ 概要
自ら法人を設立し、新規事業をスタートする“最もダイレクトな事業投資”。収益のすべてを自分で享受できる一方で、あらゆるリスクも自分が引き受ける必要があります。
■ 特徴
- 【初期投資額】:100万円〜(業種により千差万別)
- 【関与度】:最大(完全関与)
- 【リターン】:事業の成長次第で無限大
- 【リスク】:すべての失敗は自己責任に直結
■ ポイント
「やりたいことがある」「人生をかけて挑戦したい」方には非常に魅力的。ただし、綿密な事業計画、マーケティング戦略、資金繰り管理は必須。創業補助金や融資制度を活用すれば、リスクを軽減した形でのスタートも可能です。
第4章:タイプ別診断チャート「あなたにぴったりの事業投資はこれだ」

「どの事業投資がいいのか?」という疑問に答えるには、自分自身の性格や資産状況、リスク許容度を明確にすることが不可欠です。この章では、自己分析に役立つ5つの質問を用いた診断チャートを提示し、それぞれに適した投資スタイルを導きます。
【診断チェックリスト】
以下の質問にYESまたはNOで答えてください。
- まとまった資金(500万円以上)を長期間寝かせてもよい余裕がある
- ビジネスや経営に関心があり、実務にも少しは関わりたい
- リスクを取ってでも、大きなリターンを狙いたい性格だ
- 人との出会いや信頼関係を大事にする傾向がある
- 時間的にある程度の余裕があり、副業としての活動が可能である
【診断結果:タイプ別おすすめ投資スタイル】
● YESが4つ以上 → 【タイプA:積極参画型】
あなたは「ビジネスに関心があり、自分も関わって育てたい」と考えるタイプ。
→ おすすめ:共同経営型、事業承継投資、自営型起業
● YESが2〜3つ → 【タイプB:戦略的バランス型】
関心はあるが、リスクや時間のバランスを意識して行動するタイプ。
→ おすすめ:フランチャイズ投資、ファンド型事業投資
● YESが1つ以下 → 【タイプC:慎重派・学習型】
まずは事業投資というものを体験しながら理解を深めたいタイプ。
→ おすすめ:クラウドファンディング型、マイクロファンド型
【補足:資産別・年齢別・目的別アドバイス】
分類 | 推奨投資タイプ | 解説 |
---|---|---|
資産が1,000万円未満 | クラファン型・ファンド型 | 少額からスタートし経験を積む |
資産が1,000〜5,000万円 | フランチャイズ・共同出資 | 分散しつつリスク調整可能 |
資産が5,000万円超 | 事業承継・自営型 | 本格的な事業運営や法人活用も視野に |
30代〜40代前半 | インカム型+学び重視 | 成長と安全性のバランスを意識 |
50代以降 | 安定性重視・承継型 | 事業承継による地域貢献+安定収益 |
社会的意義を重視 | 社会起業・農業投資等 | ESG投資・SDGs文脈との親和性 |
第5章:選ぶときに見落とされがちな“5つの落とし穴”

どれほど魅力的に見える事業投資であっても、検討段階での判断ミスが後に大きな損失を生むことがあります。ここでは、事業投資を始める前にぜひ押さえておきたい「よくある失敗のパターン」を5つご紹介します。
落とし穴①:表面利回りに惑わされる
パンフレットや提案資料でよく見かける「年利15%」「3年で元本2倍」などの数字。これらは一見魅力的ですが、その多くは“理想条件が揃ったケース”を前提としたシミュレーションにすぎません。
実際の投資では、予想外の支出、売上低迷、競合出現などのリスク要因が常に存在します。重要なのは「最悪の場合どうなるか?」を想定し、最も保守的なシナリオで判断することです。
落とし穴②:人(経営者)を見ていない
事業投資において、成功の鍵を握るのは“誰が舵を取っているか”です。どんなに優れたビジネスモデルでも、実行力・誠実さ・柔軟性に欠ける経営者では立ち行かなくなります。
資料や数字だけではなく、「話した印象」「過去の実績」「トラブル時の対応力」といった“人となり”をしっかりと見極めることが必要です。
落とし穴③:契約書のチェックを怠る
出資契約書、業務委託契約、株主間契約など、事業投資では多数の法的文書が交わされます。しかし、内容を理解せずにサインしてしまうケースが後を絶ちません。
特に注意すべきなのは「出資の取り扱い」「損失が出た場合の責任分担」「事業清算時の資産分配ルール」など。信頼できる弁護士や税理士のチェックを受ける習慣を持ちましょう。
落とし穴④:事業内容を“自分の言葉”で説明できない
「何に投資しているのか」を自分自身が理解していない状態では、意思決定もリスク対応も曖昧になります。
説明を聞いたときに「なんとなく分かったつもり」で終わらせず、必ず自分の言葉で要約できるレベルまで理解を深めてください。これは、第三者への相談や家族への説明にも役立ちます。
落とし穴⑤:イグジット戦略を持たない
事業投資は“始めること”だけでなく、“終わらせ方”が極めて重要です。出口(イグジット)を見据えた戦略がないまま始めてしまうと、資金の回収が難しくなることも。
- 何年後に回収を目指すのか?
- 売却先は想定されているか?
- 自社株の譲渡ルールはどうなっているか?
こうした点は、投資時に必ず確認しておくべき基本事項です。
第6章:事業投資を始める前に準備すべき5つのステップ

実際に事業投資を始める前に、「何を・どのように準備すべきか?」という点をクリアにしておくことは非常に重要です。この章では、投資家としての心構えだけでなく、実務的なステップについても具体的に解説します。
ステップ①:投資の目的を明確にする
最初に問うべきは、「なぜ自分は事業投資をしたいのか?」という問いです。
資産を増やしたいのか、社会に貢献したいのか、新しいネットワークを築きたいのか──目的によって選ぶ投資手法も変わってきます。
たとえば、「短期で資産を増やしたい」ならキャピタル重視型、「安定収入を得たい」ならインカム型、「人生の第二ステージを模索したい」なら事業承継型や自営型がマッチするかもしれません。
ステップ②:余裕資金を明確にし、リスク許容度を測る
事業投資はハイリスク・ハイリターンの性質を持つため、「生活に影響しない余剰資金」で行うことが鉄則です。
また、自分が“どれだけの損失を受け入れられるか”を知ることも大切です。
- 投資可能額は?(総資産の5〜10%以内が理想)
- 回収までの期間はどれくらい耐えられるか?
- 万が一の際、精神的にどこまで耐えられるか?
この自己分析があいまいだと、途中で不安に飲み込まれる可能性が高くなります。
ステップ③:信頼できる情報源と人脈を確保する
事業投資では「案件選び=パートナー選び」です。
案件情報の質がすべてを左右すると言っても過言ではありません。
- 地元の商工会議所
- 信頼できるM&A仲介業者
- ベンチャーキャピタル・エンジェルネットワーク
- クラウドファンディングプラットフォーム
- 経営者との紹介ネットワーク など
情報ルートを複数持っておくことで、比較・検討の視野が一気に広がります。
ステップ④:最低限の会計・法務・税務知識を身につける
「経理や契約が苦手…」という方でも、事業投資を行う以上、最低限の知識は避けて通れません。
特に以下の点は事前に学んでおくと安心です。
- 貸借対照表・損益計算書の読み方
- 出資契約書・株主間契約の基本構造
- 配当・報酬の税務上の取り扱い
- 消費税・法人税の概略 など
書籍やセミナーも良いですが、身近な税理士・行政書士と関係を築いておくと心強いサポーターになります。
ステップ⑤:出口戦略と“撤退ルール”を考えておく
「いつ・どうやって利益を回収するのか?」だけでなく、「期待どおりにいかなかったとき、どこで見切りをつけるのか?」という判断基準をあらかじめ定めておくことが、感情的な判断を防ぎます。
- 何年後にどれくらいの回収を見込むのか?
- 赤字が○ヶ月続いたらどうするか?
- 経営陣との信頼関係に問題が生じたときの対応は?
この“撤退の美学”こそが、プロ投資家とアマチュアを分ける重要な分岐点です。
第7章:リアルな声に学ぶ──個人投資家の成功談と失敗談

理論だけでは見えてこないのが、事業投資の“現実”。
この章では、実際に事業投資にチャレンジした個人投資家たちの生の声をもとに、「なぜ成功したのか」「どこで失敗したのか」を考察していきます。成功者と失敗者の違いは、意外にも「些細な準備の有無」にあったりします。
成功談①:40代会社員、クラファン型投資で“副業感覚”の資産形成
● プロフィール
大手企業に勤める40代男性。資産運用の経験はあったが、事業投資は初めて。
● 投資内容
クラウドファンディング型の小規模飲食店プロジェクトに10万円出資。年間5%の配当と、優待として飲食券を取得。
● 成功要因
- 少額から始め、無理のない範囲でトライ
- 出資先が明確で共感できるビジョンだった
- 経営者との交流会で事業理解が深まった
● コメント
「数字以上に、“自分の出資で人が動いている”という実感が嬉しかった。資産形成というより、人生が豊かになった感覚です。」
成功談②:50代経営者、事業承継投資で“第二の事業軸”を確立
● プロフィール
中堅IT企業の社長。自社事業とは別軸で安定収入を得る目的で事業投資を検討。
● 投資内容
地方の老舗製造業をM&Aで買収。既存スタッフに運営を任せつつ、財務面と営業支援を実施。
● 成功要因
- 売上・利益とも安定していた黒字企業に絞って交渉
- 自社リソースとの“シナジー”があった
- 後継者候補を採用し、長期視点で育成
● コメント
「自社の空いている人材や取引先をうまく使って、リスクを抑えながら収益化できた。銀行評価も高くなり、次の展開もしやすくなった。」
失敗談①:30代副業家、スタートアップ投資で痛恨の全損
● プロフィール
本業の収入が安定していたため、余裕資金でスタートアップに出資。
SNSで話題の起業家に共感し、事業計画をあまり精査せず100万円を出資。
● 結果
半年でサービスが頓挫。代表者とも連絡が取れず、出資金は全損。
● 失敗要因
- 出資契約書の内容を理解していなかった
- ヒト(起業家)に惚れ込みすぎた
- 他の投資家や専門家の意見を求めなかった
● コメント
「いい勉強代だったと思うが、もう少し慎重に動くべきだった。SNSだけで判断したのは浅はかだった。」
第8章:まとめと展望──これからの資産運用における“事業投資”の位置づけとは?

これまでの章を通じて、事業投資の多様性と魅力、そして慎重さが求められるポイントについて丁寧に紐解いてきました。最後にあらためて、今後の資産運用戦略の中で「事業投資」がどう位置づけられていくのか、その未来図を描いてみましょう。
1. 事業投資は“資産運用”と“生き方選択”の中間にある
株式投資や不動産投資と比べて、事業投資の最大の特徴は「自らの意思と感情」が反映されやすい点です。
そこには「誰と組むか」「どんな未来に共感するか」「社会にどう関わるか」といった、資産運用を超えた“人生の戦略”が含まれてきます。
資金をただ増やすだけでなく、「どう増やすか」「誰と増やすか」を選ぶ投資。それが、事業投資の真髄ではないでしょうか。
2. 富裕層だけのものから、知的好奇心ある個人投資家へ
かつては「法人経営者やプロ投資家にしかできない」と思われていた事業投資も、近年ではクラウドファンディングや小規模M&Aの浸透により、30代〜50代の会社員や副業家の間にも広まりつつあります。
これは単に「投資対象が増えた」という話ではありません。
“資産形成と自己成長が重なる領域”として、事業投資は今後、個人投資家にとっての新たな主戦場になる可能性を秘めています。
3. 「資産防衛」から「資産創造」への流れを読む
インフレ、円安、少子高齢化──日本を取り巻く経済環境は年々厳しさを増しています。
そんな時代において、従来の「守る資産運用」だけでは不十分な時代が到来しています。
その中で事業投資は、“自ら価値を生み出す”“攻めの運用”の代表格といえるでしょう。
正しく選び、適切に関与し、必要に応じて撤退する。そうしたプロセスを踏むことで、事業投資は“次の世代に受け継げる資産”となり得るのです。
4. 最後に──自分にしかできない投資を見つけよう
事業投資に「正解」はありません。
ただし、自分の価値観・経験・人脈・志向性を照らし合わせながら、“自分にしかできない関わり方”を模索していくこと。それが結果的に、最も納得感のある投資成果へとつながっていくのです。
まずは一歩、小さくてもいい。
共感できるプロジェクトを応援することから。地域の企業に話を聞きに行くことから。
事業投資は、あなたの資産運用に「物語」を与えてくれるはずです。

ファイナンス専門ライター / FP
資産運用、節税、保険、財産分与など、お金に関する幅広いテーマを扱うファイナンス専門ライター。
金融機関での勤務経験を活かし、個人投資家や経営者向けに分かりやすく実践的な情報を発信。特に、税制改正や金融商品の最新トレンドを的確に捉え、読者の資産形成に貢献することを得意とする。