
はじめての株式投資。
誰もがワクワクと不安の入り混じる気持ちでその「一歩目」を踏み出そうとします。
特に、「最初の銘柄選び」は多くの初心者がつまずくポイント。
ネットや書籍を読んでも情報が多すぎて、結局どれが自分に合っているのか分からなくなる。そんな経験をした方も多いのではないでしょうか。
でも安心してください。投資とは決して“ギャンブル”ではありません。
それは「自分の未来に投じる、学びと成長のプロセス」なのです。
だからこそ、最初の選択を間違えたくない。
リスクを最小限に抑えつつ、成功体験を積めるような銘柄を選びたい。そう考えるのは、ごく自然なことです。
本記事では、投資をこれから始める初心者、特に30代以上の読者の方に向けて、「最初の1銘柄」の選び方を体系的に解説していきます。
株式投資を学びながら、無理なく・怖がらずに・納得しながら進められる。そんな土台作りを一緒に始めていきましょう。
第1章:なぜ、最初の1銘柄が「その後」に影響するのか?

◆ 投資の“入り口”でつまずくと、続かない
投資はマラソンに似ています。
短距離で一気に儲けようとすると、呼吸が乱れて長続きしません。
特に最初に買う銘柄が、極端に値動きが激しかったり、ニュースに翻弄されるような企業だと、不安が先立ちます。「なんでこんなに下がるの?」「損をしたかも?」と精神的に消耗してしまい、結局そこで辞めてしまう方も珍しくありません。
最初の1銘柄選びは、「走り出す靴選び」のようなもの。
履きやすく、ケガをしにくく、安心して走り出せる一足を選ぶことで、投資という道を長く続けられるようになるのです。
◆ 投資スタイルは“最初の経験”に左右される
たとえば、短期的に値上がりしやすい銘柄ばかりを選ぶと、「トレード志向」に傾きがちになります。逆に、配当が安定している企業を選ぶと「長期保有スタイル」に自然となっていくこともあります。
つまり、最初の銘柄で「どう利益が出るか」「どんな値動きをするか」によって、投資家としての自分の“感覚”や“戦略”が形作られていくというわけです。
これは、たとえば読書で最初に読んだ一冊がその後の好みに影響するようなもの。投資においても「第一印象」は非常に重要です。
◆ 情報不足で勘に頼ると、痛い目を見やすい
株式投資では、情報の「質」と「出所」が非常に重要です。
SNSやYouTubeで「これから爆上がりする銘柄!」と紹介されていたからといって、そのまま買ってしまうと、期待と結果が大きく乖離してしまうこともあります。
たとえば、ある読者は、聞き慣れないバイオベンチャー株に興味を持ち、数万円分を購入。しかしその後、臨床試験の結果が出ずに株価は急落。半年で価値が半分以下になったことで、大きなショックを受け、以降の投資をやめてしまいました。
このような経験は決して珍しいことではありません。
最初の一歩がつまずきだった――それだけで投資に対する信頼感を失ってしまう方も多いのです。
ですから、最初の銘柄は「知っている企業」「業績が安定している」「値動きが比較的穏やか」なものから選ぶのが得策です。
第2章:株式投資とは?まずは全体像をつかもう
◆ 株ってなんだろう?という素朴な疑問に答えます
「株を買う」とは、企業の“一部”を所有するということです。
例えばトヨタの株を1株買ったとしたら、あなたはトヨタという会社の“オーナーの一人”ということになります。
もちろん1株だけでは会社の経営に関与できるほどの力はありませんが、株主として利益配分(=配当)を受けたり、株主総会で意見を述べる権利があるなど、「ただのお金儲け」以上の意義があるのが株式なのです。
また、企業の価値が上がれば、持っている株の価格も上がる可能性があります。これが投資の“果実”であり、多くの人が資産運用の手段として株式を選ぶ理由でもあります。
◆ キャピタルゲインとインカムゲインの違い
株式投資の利益には、大きく分けて以下の2つがあります。
- キャピタルゲイン(売却益)
…買った価格より高く売ることで得られる利益 - インカムゲイン(配当益)
…保有している間に企業から支払われる配当金
たとえば、1000円で買った株が1500円になったときに売却すれば、500円のキャピタルゲインが得られます。
また、株を持っているだけで、年に1回~2回、企業が利益の一部を分配してくれるのがインカムゲインです。
初心者にはこの「配当」による利益が見えやすく、かつ精神的に安心できるポイントになることが多いのです。毎年決まった時期に振り込まれる配当は、“目に見える成果”として投資へのモチベーションを高めてくれます。
◆ 個別株と投資信託はどう違う?
初心者がまず迷うのが「個別株にするか、投資信託にするか」という点。
簡単に言えば、以下のような違いがあります。
- 個別株
…特定の企業の株式を直接購入する。銘柄ごとの値動きに一喜一憂しやすい。 - 投資信託
…プロが多数の企業の株式をまとめて運用してくれる。リスク分散に優れるが、手数料がかかる。
初心者でも「銘柄の選び方さえ分かれば」個別株は決して難しくありません。
むしろ、企業分析を通じて“学びながら増やす”ことができるのが、個別株投資の大きなメリットです。
第3章:初心者にぴったりな銘柄の条件=5つの軸
株式投資を始める際、無数にある銘柄の中から「何を基準に選べばいいのか分からない」という声は非常に多く聞かれます。
この章では、特に初心者の方にとって安心して選びやすい「5つの選定軸」を紹介します。
◆ 1. 業績が安定しており、増益傾向にある企業
最初の1銘柄には「安定感」が欠かせません。
具体的には、売上高や営業利益が直近数年間にわたり右肩上がり、もしくは一定水準を維持している企業が理想です。
株価は企業の将来価値を織り込みながら動きます。
そのため、業績が乱高下する企業よりも、安定成長している企業の方が中長期では安心感があります。
チェックポイント:
- 過去3〜5年の売上高推移
- 営業利益率の安定性
- 業界平均と比較した利益率
◆ 2. 事業内容が理解しやすく、身近な企業
「自分が何のビジネスにお金を投じているのか」がわかることは、投資を続ける上で大きな安心材料になります。
たとえば、あなたが普段から使っているスマホキャリア(NTTドコモやソフトバンク)や、買い物に行くコンビニ(セブン&アイなど)、生活用品メーカー(花王やユニ・チャーム)など、身近な企業は日常の変化にも気づきやすく、情報も得やすいです。
知っている企業だからこそ、値動きに一喜一憂せずに保有できる。それが「投資を続けられる理由」のひとつになります。
◆ 3. 時価総額が大きく、ボラティリティが小さい
初心者のうちは「株価が急に動く」ことが大きなストレスになります。
そのため、時価総額が大きい=市場での取引量が多く、安定的に評価されている銘柄を選ぶのが賢明です。
これを「大型株」と呼びます。TOPIX Core30などに含まれる企業はこの条件に当てはまります。
また、「ボラティリティ(価格の変動幅)」が小さい銘柄は、リスクも抑えやすく、冷静に学びを深めることができます。
◆ 4. 配当を出し続けている「配当貴族」
株式投資において、「配当」は非常に重要な要素です。
毎年安定して配当金を出している企業は、経営の健全性や株主還元の姿勢が強い証拠でもあります。
とくに、「配当性向(利益のうち何%を配当に回しているか)」が無理のない範囲で高く、かつ過去10年以上にわたって増配または維持している企業は、いわば“配当の貴族”。
資産形成をする上でも、こうした企業をポートフォリオの基盤に据えることは有効です。
◆ 5. 株価チャートの動きが比較的素直であること
「チャートが読めない」と悩む方でも、過去5年〜10年の株価推移を見れば、おおまかな傾向は掴めます。
たとえば、緩やかな右肩上がり、あるいは大きく暴落していない企業であれば、心理的にも安心して保有できます。
極端に値動きが荒い銘柄や、過去に株価が急落している企業は、初心者にはあまりおすすめできません。
第4章:銘柄選びに使える実践アプローチ5選

初心者が最初の銘柄を選ぶには、「自分に合った探し方」を見つけることがポイントです。ここでは、今すぐ実践できるアプローチを紹介します。
◆ 1. 日常生活からヒントを得る「生活密着型投資」
たとえば、あなたがよく利用しているスーパーやネット通販、子どもが好きなゲーム会社、休日によく行くカフェ。
こうした「日常の消費行動」をヒントにすることで、自然と事業内容にも詳しくなり、投資のリスクも下がります。
これはウォーレン・バフェット氏も実践していた有名なスタイル。見逃せません。
◆ 2. 株主優待のある企業から選ぶ
「お米」「クオカード」「カタログギフト」など、株主優待が充実している企業は多く存在します。
特に初心者にとって、株主優待は“目に見えるリターン”としてモチベーションを維持しやすいです。
ただし、優待のみに惹かれて選ぶのではなく、業績や財務の健全性も必ずチェックしましょう。
◆ 3. 配当利回りで絞り込む
高配当株は、株価の上下に関係なく「現金収入」が得られるという大きなメリットがあります。
一般的には配当利回りが3%以上あれば魅力的とされますが、極端に高すぎる場合(6%以上など)は「減配リスク」がある可能性もあるため、注意が必要です。
◆ 4. スクリーニングツールを活用する
証券会社の提供する「銘柄スクリーニングツール」を使えば、自分が欲しい条件(配当利回り、PER、時価総額など)を入力するだけで、該当する企業を一覧表示してくれます。
使いやすく初心者向けに設計されたサービスも多いので、ぜひ活用してみてください。
◆ 5. 会社四季報で“企業の中身”を見る
東洋経済新報社が発行する「会社四季報」は、上場企業の業績・財務・事業内容が網羅された情報の宝庫。
初心者には「見出し」や「業績推移」「配当欄」など、最低限押さえるべきポイントを読むだけでも大きな助けになります。
書店でも買えますし、電子版なら検索機能もついていて便利ですよ。
第5章:ファンダメンタル分析の基本ステップ
「この企業、良さそうだな」と思ったとき、最後の一押しとなるのが“数字による裏付け”です。
ここでは難しすぎず、でも信頼できる指標を中心に解説します。
◆ PER(株価収益率)
株価 ÷ 1株あたりの利益(EPS) で計算される指標。
一般的には15倍前後が妥当とされ、それより高ければ“割高”、低ければ“割安”と判断されることが多いです。
ただし、成長企業ではPERが高くなりがちなので、業種ごとの平均も併せて見るのがベストです。
◆ PBR(株価純資産倍率)
株価 ÷ 1株あたり純資産(BPS)。
こちらも「1倍」が基準。1倍を下回ると“解散価値以下”と言われ、割安感が出ますが、業績が悪化している可能性もあるため注意が必要です。
◆ ROE(自己資本利益率)
純利益 ÷ 自己資本 × 100(%) で求める指標。
資本を効率よく使って利益を上げているかどうかが分かります。
日本企業の平均は8%程度で、10%以上あれば優良とされることが多いです。
◆ 自己資本比率
企業の財務体質を見る指標。
自己資本比率が40%以上あると、倒産リスクが低く、健全とされます。
◆ 配当性向
利益のうち、どれだけ配当に回しているかを示す指標。
50%前後が標準的。あまりにも高すぎると、将来的に減配のリスクもあるため、注意深く見ておきましょう。
第6章:初心者でも選びやすい実例銘柄紹介(2025年版)
これまでの章では、株式投資の基本や「良い銘柄」の条件、選び方のコツを学んできました。
ここではそれらの知識を活かして、2025年時点で初心者にとって特に選びやすいとされる「安心・安定・実績あり」の銘柄をいくつかご紹介します。
※本記事はあくまで情報提供を目的としたもので、特定の銘柄を推奨するものではありません。購入の判断はご自身の責任でお願いいたします。
◆ NTT(日本電信電話/9432)
- 時価総額: 約14兆円(2025年時点)
- 配当利回り: 約3.6%
- 特徴: 国内通信事業の中核を担うインフラ企業。
- 初心者向けポイント: 株価が比較的安定しており、業績・配当ともに安心感がある。2023年の株式分割により購入しやすくなったのも好材料です。
◆ ソフトバンク(9434)
- 時価総額: 約7兆円
- 配当利回り: 約4.5%
- 特徴: 通信+金融+ITのハイブリッド企業。PayPayなど成長分野も多数。
- 初心者向けポイント: 高配当と手堅い事業モデルが魅力。配当重視の投資家に特に人気があります。
◆ 三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)
- 時価総額: 約15兆円
- 配当利回り: 約3.8%
- 特徴: 日本最大のメガバンクグループ。海外展開も積極的。
- 初心者向けポイント: 安定性に加えて、ROE・自己資本比率も良好。経済全体との連動性も学びやすいです。
◆ キヤノン(7751)
- 時価総額: 約3.5兆円
- 配当利回り: 約4.0%
- 特徴: プリンタ・カメラから医療・半導体装置へと展開を広げる老舗メーカー。
- 初心者向けポイント: 業績が安定しており、配当も継続。製品が身近で事業内容が理解しやすいです。
◆ 花王(4452)
- 時価総額: 約2.3兆円
- 配当利回り: 約2.7%
- 特徴: トイレタリー製品大手。生活インフラとして欠かせないブランド力。
- 初心者向けポイント: 長年連続で増配してきた「配当貴族」。株価はやや重たい印象があるものの、長期保有には向いています。
第7章:買う前に必ず確認すべきチェックリスト
気になる銘柄が見つかったら、次は「買う前の最終チェック」です。
この一手間が、投資の失敗を大きく減らしてくれます。
◆ 1. 最新ニュースをチェックする
買おうとしている企業に関する「直近の材料」は、必ず確認してください。
たとえば、次のような情報は株価に大きく影響を与える可能性があります。
- 不祥事や法的リスク
- 重要な買収・提携ニュース
- 業績の下方修正
Yahoo!ファイナンスや証券会社の公式ページ、企業IR(投資家向け情報)ページを見るだけでも十分です。
◆ 2. 株主優待の“メリット・デメリット”を把握する
株主優待は楽しい制度ですが、あくまで「おまけ」です。
優待目的で買って、株価が下落してしまえば本末転倒。特に近年では優待廃止も増えているので、過度に期待しないことが肝心です。
◆ 3. 株価チャートで「値動きの傾向」を把握する
チャートは“未来”を予測するためというより、今までの「企業に対する評価の軌跡」を読み取るものです。
- 移動平均線(25日・75日)と実際の株価が離れすぎていないか
- 出来高(取引量)は適切か(極端に少ないと売買が成立しにくい)
といった基本的なポイントだけでも、チェックしておく価値があります。
第8章:最初の1銘柄購入後にやるべき習慣3ステップ
買って終わりではありません。
むしろ、買ってからこそ「投資家としての成長」が始まります。
◆ ステップ1:四半期ごとに決算情報をチェックする
企業は3ヶ月ごとに業績を発表します(四半期決算)。
売上や利益が前年同期比でどう動いているか、簡単な項目だけでもチェックしておくと、企業の調子が見えてきます。
◆ ステップ2:「自分だけの学びノート」をつける
- なぜその銘柄を選んだのか
- いつ、いくらで買ったのか
- どういうニュースで株価が動いたのか
こうした情報を手帳やスマホメモに残すことで、次の投資に活きる「振り返り資産」が積み上がります。
◆ ステップ3:情報源を3つに絞って定点観測する
情報過多の現代では、「情報を取る力」以上に「情報を捨てる力」が大事です。
初心者は、まず次の3つで十分です。
- Yahoo!ファイナンス(ニュース・株価・指標)
- 日経新聞(経済全体の動き)
- 会社四季報(企業の基本情報)
第9章:初心者からよく寄せられるQ&A
Q:NISAと特定口座、どちらで買えばいいですか?
初心者にはまずNISA(新NISA)口座の活用がおすすめです。
非課税で運用できるため、利益を最大化しやすく、学びながら実践するには最適な制度です。
Q:少額でも買えますか?
はい、単元未満株(S株・ミニ株など)を活用すれば、1株単位での購入も可能です。
1万円以下で始められる銘柄も多く、まずは「触れてみる」ことからスタートしてみましょう。
Q:いつ売ればいいのか分かりません…
多くの初心者が抱える悩みです。
まずは「配当目的なら長期保有」「値上がり狙いなら、目標利回り(例:+10%)」など、自分なりのルールを決めておくことが大切です。
「なんとなく」ではなく、「判断基準」を持つことが、冷静な投資を助けてくれます。
まとめ:「失敗」で終わらせない、学び続ける投資へ

投資は、始めることよりも「続けること」の方が難しい。
そして、続けられる人のほとんどが、最初の銘柄選びで“過度に背伸びをしなかった人”です。
最初の1銘柄で失敗しないことよりも、学び、振り返り、次に活かす力を育てることが最も大切です。
株式投資は、知識を深めるほどにお金の動きが面白くなり、経済や社会への興味も自然と広がります。
これから始まるあなたの投資生活が、充実した未来へつながる第一歩となるよう、心から願っています。

ファイナンス専門ライター / FP
資産運用、節税、保険、財産分与など、お金に関する幅広いテーマを扱うファイナンス専門ライター。
金融機関での勤務経験を活かし、個人投資家や経営者向けに分かりやすく実践的な情報を発信。特に、税制改正や金融商品の最新トレンドを的確に捉え、読者の資産形成に貢献することを得意とする。