資産管理会社という言葉を耳にしたことがある方も多いでしょう。
しかし、その具体的な内容や設立の目的については意外と知られていないことが多いのが現実です。
資産管理会社は、特に高所得者や経営者、個人事業主にとって非常に有益な仕組みでの設立で、資産の効率的な管理や税務面での大きなメリットを享受することが可能になります。
今回は、資産管理会社の基本的な概念から、設立する際のメリット・デメリット、さらに設立手順や注意点までを詳しく解説していきます。
資産を持つ人々にとって、資産管理会社を設立することは一つの戦略的な選択肢となるはずです。
1. 資産管理会社の概要
資産管理会社とは?
資産管理会社とは、個人の資産を法人という形態で管理・運用するために設立される会社のことです。
この会社は、通常のビジネス活動を行うのではなく、個人の資産(不動産、株式、現金など)を管理するための特殊法人として設立されます。
多くの場合、資産管理会社は、税務上の優遇措置を受けたり、事業承継や相続において大きなメリットを享受するために利用されます。
会社として法人化することにより、個人の資産とは異なる税務・法的な取り扱いがされ、資産保護や税務面での優遇が受けられる点が大きな魅力。個人で資産を運用する場合と比べて、法人化することで得られるメリットは多岐にわたります。
企業形態や設立目的
資産管理会社を設立する主な目的には、以下のものがあります。
- 事業承継の円滑化
資産管理会社は、資産を一元的に管理することで、事業承継をスムーズに行うためのプラットフォームとして利用されます。
親から子への資産移転において、資産管理会社を通じて、相続税の評価額を抑えたり、税制優遇の活用が可能になります。企業経営者にとっては、事業承継に伴う税負担を軽減する手段として有効です。 - 資産の一元管理
不動産、株式、債券、現金など、個人で管理している資産をまとめて法人化することで、管理が楽になります。また、法人化により、資産運用における戦略的な判断や、リスク分散のための選択肢を広げることが可能です。
これにより、資産管理の効率化と、長期的な資産増加を目指すことができます。 - 税務面でのメリット
資産管理会社の設立で、法人税率が適用されるため、個人の所得税率よりも低い法人税率を享受できる場合があります。法人であれば経費計上の幅が広がり、事業に関する支出を経費として計上することが可能になり、法人としての運営で税務上の優遇措置を得られます。
資産管理会社の基礎知識
資産管理会社は、法人化することにより、個人の資産管理とは別の枠組みで税務を管理することが可能です。
- 法人税制の適用
資産管理会社は法人税法に基づいて運営されるため、所得に対して課せられる税率が、個人の場合とは異なります。法人税率は一般的に個人の所得税率よりも低く、そのため経営者が会社に利益を残す形にすることで、税金を抑えられます。 - 法人による資産の保有
資産を個人ではなく法人名義で保有できるため、法人格の保護を受けられます。これにより、法人自体が資産を管理し、万が一の事態(倒産や訴訟など)においても、個人資産の保護が期待できます。 - 経費計上の幅の広がり
法人の場合、資産管理に関する経費を広く計上できるため、税務上のメリットが大きいです。例えば、不動産を保有している場合、管理費用や維持費用を法人の経費として処理できます。
資産管理会社の目的と考え方
資産管理会社を設立する目的は、単なる税務対策だけにとどまりません。
設立者にとっては、次の多面的な目的が考えられます。
- 資産保護
法人化することで、個人資産を法人資産として扱うことができ、万が一の訴訟や負債問題において、個人資産が守られるという大きな利点があります。特に、大規模な資産を保有している場合、個人の名義で全てを管理することにはリスクが伴いますが、法人化することでそのリスクを回避できます。 - 相続税の軽減
資産管理会社の設立で、相続税の軽減を図れます。法人名義での資産管理によって、評価額の引き下げが可能になり、相続税の課税対象を減少させられます。また、事業承継税制の活用で一定条件のもとで相続税の軽減も可能です。 - 税制優遇措置の活用
資産管理会社は、法人税制を利用するため、税務上の優遇措置を最大限の活用ができます。例えば、事業活動に関連する費用を法人の経費として認められる範囲が広がり、税負担を軽減することができます。また、法人設立後の利益に対して法人税が課せられますが、個人の所得税に比べて税率が低いことが多いため、所得税負担を抑えることが可能です。 - 資産運用の効率化
資産管理会社を通じて、効率的な資産運用が可能になります。法人としての運営で、投資や運用を専門の資産運用者に任せることができ、個人で管理する場合に比べて専門性の高い運用が可能になります。そのため、資産の増加を効率よく目指すことができるのです。
2. 資産管理会社を設立するメリット
税制優遇措置
資産管理会社設立における最も大きなメリットの一つは、税制面での優遇措置です。
個人資産と法人資産では、税金の扱いが大きく異なりますが、法人税率は、個人の所得税率よりも低いことが多いため、高額な利益の法人化で、納税額を大幅に削減できる可能性があります。
例えば、日本の法人税率は、所得金額に応じて変動しますが、一般的に約23%前後です。これに対し、個人の所得税率は、最高で45%(住民税を含めると55%を超えることも)に達するため、法人化することによって税金の負担を大きく減らすことができます。
さらに、法人には多くの経費を計上できるため、節税効果をさらに高めることが可能です。
例えば、事業活動に関連する支出は全て経費として処理できますので、家賃や人件費、光熱費などが経費として計上され、課税所得を減少させることができます。
個人ではこのような経費処理が制限されることが多く、法人化で柔軟な資産運用が可能となります。
不動産や株式の管理における税制の優遇
資産管理会社の利用で、不動産や株式などの資産管理においても税制優遇を享受できます。
特に不動産に関しては、法人所有にすることで、所得税や譲渡税の軽減を図れます。
法人が不動産を所有する場合、個人とは異なる税務上の取り扱いになります。
法人に不動産を移転すると所有者が法人となるため、不動産の売却時に個人の譲渡税が発生しません。法人の不動産譲渡には、法人税や消費税が課されるものの、個人の場合の譲渡所得税とは異なり、税率が低く、さらに損失が出た場合には繰越しが可能なため、柔軟に税制を利用できます。
株式についても、法人としての保有で、配当金に対する課税が軽減される場合があります。
個人で株式を保有している場合、配当金に対しては総合課税が適用されますが、法人の場合、一定の条件下で配当金を法人内で移転することが可能です。これにより、税金を先送りにしたり、他の事業活動に資金を充てることができ、運用効率が高まります。
相続税対策(評価額の減少、事業承継税制)
個人で資産を所有している場合、相続時にその資産の評価額が基に相続税が課税されますが、資産管理会社を設立していれば、資産の評価額を圧縮することが可能になっています。
不動産や株式などを法人名義で所有することで、個人名義で直接所有している場合と比べて評価額が大きく低くなる可能性がありますが、法人における資産の評価は、個人資産に比べて柔軟に処理できるため、適切な評価方法を選ぶことで相続税を軽減できます。
さらに事業承継に関しても、法人化によって税制上の大きなメリットがあります。
日本では、事業承継税制があり、一定の要件を満たすことで、事業を次世代に引き継ぐ際の相続税負担の軽減が可能です。そして、後継者に対する資産の移転が円滑に進み、事業の継続性を保ちながら税負担を最小化できます。
経営の柔軟性と資産運用の多様化
法人としての活動範囲が広がり、例えば金銭信託やSPC(特定目的会社)などを活用して、資産運用をさらに多様化させることができます。
金銭信託を利用することで、法人の資産を分別して運用することが可能となり、リスク分散を図りながらも、効率的な資産運用が実現できます。
特定目的会社(SPC)を利用すれば、特定の事業目的に資産を集中させ、最適な税制優遇を受けながら運用をすることができます。
また、法人の設立で、さまざまな資産を一元的に管理し、財産全体を効率よく運用できます。不動産、金融資産、さらには知的財産権まで、幅広い資産クラスを一つの法人で包括的に管理でき、全体的な資産のバランスを保ちながらの運用が可能です。
事業承継対策
資産管理会社設立の最大の目的の一つに、事業承継時の税金対策があります。
事業承継は経営者にとっては避けて通れない重要な問題であり、適切に対策を講じておかなければ、相続税や贈与税が過度に高くなり、事業の継続が困難になる場合もあります。
資産管理会社を設立しておくことで、後継者に対する資産の移転が円滑に行われ、税負担を軽減できます。
例えば、事業を法人化しておけば、後継者がその法人株式を相続した場合でも、相続税の評価額を低く抑えることができ、税制上有利な形で事業を引き継げます。
経営者としてのメリット
経営者が自身の資産を法人で保有する場合、所得税率が法人税率よりも低いため、経営者が役員報酬を支払う形で所得を分散し、所得税の負担を軽減できます。
また、個人事業主からの法人化で、個人資産を法人に移転し、法人税率で管理することができるため、節税効果を最大化できますし、このような経営者としてのメリットは、将来的に事業規模が拡大した場合や、資産の分散管理を行いたい場合に特に有効ではないでしょうか。
資産管理会社を設立することで、税制優遇措置、相続税対策、資産運用の多様化など、多岐にわたるメリットが得られますが、それだけでなく、事業承継や資産保護、後継者への資産移転の円滑化など、将来的な安心感を得るためにも非常に有効な手段となります。
3.資産管理会社を設立するデメリット
資産管理会社を設立することには数々のメリットがありますが、その反面、デメリットも存在します。これらのデメリットをしっかりと把握し、計画的に対処することが重要です。
法人設立に伴うコストと管理負担
資産管理会社の設立には、 初期コストと維持費用がかかります。
さらには、法人を設立するための、定款の作成、登記申請、税務署への届出など、事務手続きが複数あります。
設立費用: 株式会社の場合、最低資本金が1円から可能ですが、実際には100万円程度を目安に資本金を設定するケースが多い。登記にかかる費用は、司法書士に依頼すると約10万円前後が相場。
維持費用: 法人を維持するための年次費用として、税理士や会計士への報酬、法務局や税務署への定期的な届け出手続きにかかる費用が必要。
これらの費用は年間で数十万円になる場合があります。
また、資産管理会社を運営するためには 日常的な経理や法務管理も欠かせず、帳簿の整備や税務申告、法務的な手続きが含まれ、事業規模に応じて経理担当者や外部の専門家の雇用が必要になることもあります。
税務面でのリスク
税務署の監査強化リスクや、不適切な経営が法人税の過剰負担に繋がるリスクについては注意するようにしましょう。
税務署の監査強化リスク: 高額な資産を保有している法人は、税務署からの監査対象となるリスクが高くなります。不動産や株式などの運用に関して、適切に税務申告が行われていない場合、大きな追徴課税を受ける可能性があります。
過去には、法人設立を利用した税務逃れが問題視されることもあり、税務署はそのような法人を徹底的に監査する傾向にあると言われています。
不適切な経営が法人税の過剰負担に繋がるリスク: 資産管理会社が行うべき適正な経営が行われていない場合、法人税が過剰に課されるリスクもあります。
法人が支出した経費が 税法に照らして認められない場合など、税務調査時に過剰な法人税が課されることがありますが、このようなリスクを避けるためには、税務面に強い専門家をアドバイザーとして迎えることを検討してみてください。
法人化に関する注意点
複雑な法人運営: 事業活動をする場合、法人の運営は個人事業主に比べて 法律や税制が複雑。
例えば、法人税の申告書を作成する際に、個別の経費や収入の処理、消費税の申告が必要で、これらを誤ると、法人に対して追加税金やペナルティが科せられることもあります。
法人の監視体制: 法人が不動産を保有している場合などには、税務署から 不動産所得に関する詳細な調査を受けるリスクがあります。資産管理の透明性を保つために、法人の活動内容を適切に記録し、税務署に対して適切に報告する義務が増えます。
適用される税率や税制変更のリスク
法人税の適用を受ける資産管理会社は、税制変更の影響を考えなければいけません。
税率の変更や税制改正により、今まで有利に働いていた優遇措置が廃止されたり、逆に負担が増加したりする可能性を考慮するようにしましょう。
法人税率の変更: 法人税の税率は、政府の政策に応じて変更されることがあります。
税制改正によっては法人税率が増税されることがあり、その影響を受けるかもしれません。
事業内容に応じた税制の変更: 資産管理会社の事業内容(不動産運用、金融商品運用など)に応じた税制変更もあります。例えば、 不動産の減価償却や資産売却時の課税方法などが変更されることがあり、事業運営の方針に影響を及ぼすことがないか、注意するようにしましょう。
4.資産管理会社に適した会社形態と設立手順
資産管理会社を設立する場合、どの”会社形態を選ぶか”は、運営方法や目的に大きな影響を与える重要な要素です。
会社形態は、資産運用の効率性や税務面、管理コストなどに直結するため、適切な選択が求められます。
また、設立手順についても正しいプロセスを踏むことが、スムーズで問題のない運営のスタートに繋がりますから、次からは資産管理会社の形態選定とその設立手順について、見ていきましょう。
適切な会社形態
資産管理会社を設立する際に選べる主な会社形態は「株式会社」や「合同会社」、さらには特例有限会社やSPC(特定目的会社)などがあります。
それぞれにメリットとデメリットがあり、どの形態が適しているかは、会社の規模や経営方針、運営スタイルに依存します。
株式会社
株式会社は最も一般的な法人形態であり、信頼性が高いという特徴があります。
投資家からの出資を受けやすく、法人税や所得税に対して有利な条件を享受できます。
具体的には、配当金を受け取る際に個人が受ける税負担が軽減されることがあり、資産運用の収益に関しても一定のメリットがあります。ただし、設立や運営に関するコストはやや高く、決算報告や株主総会などの手続きも煩雑になる傾向を考慮しましょう。
メリット
- 信頼性が高く、社会的に認知されている。
- 資本金の調達がしやすく、将来的な株式公開が可能。
- 個人事業主や他の法人との契約時に強い。
デメリット
- 設立費用や維持費が高い(登記手続きや税務処理が煩雑)。
- 株主総会や決算報告など、法的義務が多い。
合同会社(LLC)
合同会社は、株式会社に比べて設立や運営コストが低いため、小規模な資産管理会社や、柔軟な運営を重視する場合に向いています。
会社設立時の手続きも簡便で、税務面でも株式会社と同等の法人税制が適用されますが、合同会社は法人税率が一定のため、所得が増えても税率が変動しにくいというメリットがあります。
メリット
- 設立コストが低く、管理がシンプル。
- 所有者の責任が有限で、個人資産が保護される。
- 株式会社よりも決算報告などの義務が少ない
デメリット
- 社会的な信頼性や信用度が低い。
- 資金調達の際に不利になりやすい。
特例有限会社やSPC(特定目的会社)の活用方法
特例有限会社やSPC(特定目的会社)は、特定の資産運用目的に合わせて設立される法人です。
不動産投資や特定のプロジェクトのために資産管理を行う場合などはこれらの形態が有効です。
- 特例有限会社:特例有限会社は、元々有限会社制度が廃止される前に設立されたもので、現在でも一定のメリットがあります。少人数で運営する資産管理会社や小規模事業主に適しており、株式会社よりも簡便な管理が可能。
- SPC(特定目的会社):不動産やプロジェクトに特化した会社であり、複雑な投資家向けの資産運用に向いている。主に不動産のプロジェクトに関わる際に利用されることが多いですが、SPCは法人税制が適用されるため、税負担を軽減できる可能性もあります。
設立手順
資産管理会社を設立する際の手順は、一般的な会社設立手順と大きな違いはありませんが、税務面で注意が必要です。
- 会社名や目的の決定
会社名(商号)や事業目的を決めます。資産管理会社の目的としては、不動産の管理や投資、株式運用などが考えられます。 - 定款の作成
定款は、会社の基本的な運営ルールを定める文書です。株式会社の場合、定款には設立趣意書や役員構成について記載が必要です。合同会社の場合も定款が求められますが、作成の手間は少なくて済みます。 - 登記申請書と税務署への届出書類
登記申請書を作成し、法務局に提出します。また、税務署への届出書類も提出する必要があります。特に、税務署への届出が遅れると、事業開始後に税金に関するトラブルが発生する可能性があるため、早めに手続きを行うことが重要です。 - 資本金の決定
資本金を決定します。資本金額は会社の規模や運営方針により異なりますが、少なくとも100万円以上が望ましいとされています。 - 役員の選定
会社の代表取締役や役員を選定します。役員は資産管理会社の運営において重要な役割を担うため、信頼できる人物を選びましょう。 - 法人番号の取得
設立手続きが完了した後、法人番号が発行されます。この法人番号は、税務署への申告や取引先との契約に必要です。
税務署や法務局への届け出手順
設立後は、税務署への法人設立届出書を提出する必要があります。
また、法務局への商業登記の申請も行いますし、これらの手続きは税務面や法的義務を履行するために必須となりますので、迅速に行いましょう。
5. 資産管理会社を設立すべき人と注意点
資産管理会社の設立は、特定の状況において非常に有益な選択肢となります。しかし、すべての人にとって適しているわけではありません。
まずは設立すべき人と、設立を控えるべき人を見極めるようにしましょう
設立すべき人
- 事業承継を考えている経営者 事業承継は、家族や親族に自社を引き継ぐ際に発生する重要な課題です。経営者が資産管理会社を設立することで、事業承継の計画が円滑に進み、相続税の軽減や節税が可能となります。
事業承継税制を活用すれば、経営権の移転時に課せられる税負担を大幅に削減することができ、事業と個人の財産が分離されるため、資産管理や相続の面での柔軟性が高まります。 - 不動産投資家や資産運用を行っている個人 不動産投資や金融商品への投資を行っている個人の場合、資産管理会社を設立することで、所得の分散や税務面での優遇措置を享受できる可能性があります。
法人を通じて不動産収益を得ることで、法人税を利用して利益の圧縮が可能となり、個人での高い所得税を回避することができます。また、不動産を法人名義で保有することで、相続税対策としても活用できるため、長期的な資産運用を考えている方にはメリットがあります。 - 資産が1億円以上の個人(相続対策を意識している場合) 相続税の基礎控除額は、配偶者や子供との関係性によって異なりますが、資産が1億円以上となると、相続税がかなり高額になる可能性があります。このような場合、資産管理会社を設立し、法人の名義で資産を管理することで、相続税を軽減できる場合があります。
設立を控えるべき人
- 資産が少ない、事業承継の計画がない人 資産が少ない場合、法人設立に伴うコストや維持費用が見合わない場合があります。
資産管理会社の設立には一定の設立費用がかかるほか、毎年の法人税や事務手続きのコストが発生しますから、これらの費用が資産規模に対して過剰である場合、設立のメリットは薄く、むしろ経済的に負担となることもあります。
事業承継の計画がない場合も、法人化によって得られる相続税の軽減効果がないため、設立する理由が少ないと言えるでしょう。 - 設立後の管理や運営が負担になる人 資産管理会社の運営には、日々の経理業務や法務管理が必要です。これらを自力で行うことが難しい場合や、専門家に頼む費用が高くつくと、長期的に管理が負担になる可能性があります。
税務申告や法人の決算、法務に関する業務を怠ると、後々トラブルが発生する可能性が高く、最終的にコストがかさむ結果になります。もし、管理や運営の負担が大きすぎると感じる場合、資産管理会社の設立は避けた方が無難です。 - 資産規模が小さい場合や、資産運用に特化した目的がない場合 資産管理会社は、ある程度の資産規模がある場合にこそメリットを発揮します。資産が少ない場合や、特に運用や事業承継を意識しない場合は、法人設立のためのコストが割に合わないことが多いです。
資産運用に特化した目的がない場合、むしろ個人名義で資産を管理した方がシンプルで効果的な場合がありますから、少額の投資や資産管理を行うのであれば、まずは個人の税制を最大限に活用する方法を検討した方が賢明です。
設立のタイミング
資産管理会社の設立には、適切なタイミングを見極めることが重要です。設立時期を誤ると、メリットを享受できなかったり、思わぬ税務リスクを抱えることになります。
- 資産規模や相続税、事業承継計画に基づいた設立時期の判断 資産管理会社を設立する最適なタイミングは、資産規模が増え、相続税の問題が顕在化したタイミングです。
事業承継を考えている経営者や不動産投資を行っている場合、相続税や事業承継税制を活用できるタイミングを逃すと、大きな税負担が発生することがあります。したがって、税制の変動を見極めつつ、設立のタイミングを決定することが肝心です。 - 相続税や事業承継税制が利用可能なタイミングの重要性 相続税の基礎控除が引き下げられたり、事業承継税制が変更されることもあります。これらの税制変更により、税負担が予想以上に重くなることもあるため、早期に資産管理会社を設立し、相続税や事業承継税制を最大限に活用することが求められます。
事業承継税制は条件が厳しく、タイミングを逃すと利用できなくなるため、注意するようにしてください。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
資産管理会社は、税金対策や資産運用、相続対策を目的とした法人設立の有効な手段ですが、その運営には慎重な管理と定期的な見直しが求められます。
メリットとしては、税金負担の軽減や資産のリスク分散、相続税対策が挙げられますが、設立や維持にかかるコストや税務面での負担も考慮する必要があります。設立する際には、税理士や専門家のアドバイスを受けることで、より効率的な運営が可能となります。