
資産運用に興味を持った瞬間、多くの人が最初に直面するのが「投資信託とETF、何が違うの?」という疑問です。とりあえず「おすすめされていたから」や「知人がやっているから」といった理由で始める方も少なくありませんが、商品選びを誤れば、思ったようなリターンが得られなかったり、思わぬリスクにさらされたりすることもあります。
そもそも「投資信託」と「ETF(上場投資信託)」は、どちらも“複数の銘柄に分散投資できる金融商品”という意味では似ています。しかし、その中身や取引の仕組み、コスト構造、運用の柔軟性には大きな違いが存在します。
この記事では、資産形成を始めたいけれど何を選べば良いか分からないという方のために、投資信託とETFの違いを基礎から丁寧に解説していきます。特に、投資初心者が「自分にとってどちらが適しているのか」を判断できるように、実際の数値や事例を交えながら、納得感のある情報提供を目指します。
「なんとなく始める」ではなく、「理解して選ぶ」ことこそが、後悔しない資産運用の第一歩。そのための“しくみの理解”を、ここから一緒に深めていきましょう。
第1章:投資信託とETFとは?―初心者でもわかる超基本解説

投資信託とは何か?仕組みと目的をやさしく解説
投資信託は、多くの投資家から集めた資金をひとつの大きなファンドとしてまとめ、運用の専門家(ファンドマネージャー)が株式や債券、不動産などに投資する仕組みです。個人が一銘柄ごとに選ぶのではなく、「プロに任せて分散投資する」という考え方がベースにあります。
例えば、ある投資信託では国内株式に広く分散して投資し、別のファンドでは米国の成長企業に集中投資することも。つまり、投資信託は「どのテーマで、どのように運用されるか」によって、その性質が大きく異なります。
購入自体は銀行や証券会社、ネット証券などを通じて可能で、「毎月1万円から」といった少額からでも始められる点が、初心者にとって非常に大きな魅力です。
ETFとは?証券取引所で取引できる投資信託のような存在
ETFは「Exchange Traded Fund」の略で、直訳すれば「取引所で売買される投資信託」です。投資信託と同様に、複数の銘柄に分散投資されたファンドですが、ETFは株式と同じように証券取引所でリアルタイムに売買されます。
そのため、指値注文・成行注文なども使え、価格も市場の需給に応じて常に変動します。いわば「上場している投資信託」として、より市場性・流動性が高いのが特徴です。
例えば、有名なETFとしては「日経平均ETF(1321)」「米国S&P500連動型(VOO)」などがあり、価格が変動するたびにすぐに売買できる柔軟性が、短中期の投資戦略において有利に働くケースもあります。
2つの共通点と根本的な違いを明確に比較
投資信託とETFは、どちらも「分散投資を前提とした金融商品」であり、リスクを抑えながらリターンを狙うという点では非常に近い存在です。しかし、仕組みの違いから実際の運用スタイルやメリット・デメリットも異なってきます。
項目 | 投資信託 | ETF |
---|---|---|
売買方法 | 証券会社経由で申込み(1日1回の基準価額) | 証券取引所でリアルタイム売買 |
手数料 | 信託報酬+購入・解約手数料がかかる場合あり | 売買手数料+信託報酬(比較的低コスト) |
運用者の存在 | ファンドマネージャーが運用 | インデックス連動型が主流で裁量なし |
分配金の扱い | 自動再投資型が多い | 配当金として受け取れる場合が多い |
向いている人 | 長期的な積立投資をしたい人 | 売買タイミングを自分で調整したい人 |
第2章:構造の違いを徹底解剖―運用方法・流動性・コスト比較
ファンドマネージャーの存在と裁量の有無
投資信託には、アクティブ運用とインデックス運用の2種類があります。アクティブ運用では、ファンドマネージャーが市場を分析し、時には大胆に銘柄を入れ替えながらベンチマーク(基準指数)を上回る成果を目指します。これは、ファンドマネージャーの“腕”に成績が左右されるため、銘柄選定やタイミングが重要になります。
一方、ETFはインデックス運用が基本です。つまり、特定の株価指数(例:TOPIXやS&P500)に連動するよう設計されており、人間の判断が入る余地はほとんどありません。市場に連動する、という意味では予測性が高く、コストも抑えられています。
上場の有無による流動性の違い
ETFが「上場している」ことの最大のメリットは、その流動性の高さです。証券取引所が開いている時間であれば、いつでも売買できるのは非常に大きな利点。急な市場変動時にも即時対応が可能であり、投資信託のように1日の終値を待つ必要がありません。
投資信託は1日1回、基準価額で取引されるため、価格の確定までタイムラグがあります。この点は「価格の透明性」が低いとも言われ、特に短期投資にはやや不向きかもしれません。
信託報酬・売買手数料などのコスト構造を数字で比較
コスト面で比較すると、ETFの方が圧倒的に優位なケースが多いです。
例えば、人気のETFである「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」の信託報酬は年0.09372%。一方、アクティブ型の投資信託では年1%以上の信託報酬がかかるケースも珍しくありません。さらに投資信託は販売会社によって購入時手数料が1〜3%ほどかかる場合もあります。
ETFはネット証券であれば取引手数料無料(SBI証券や楽天証券など)の商品もあり、長期運用において「どれだけコストを抑えられるか」が将来のリターンに大きな影響を与えることを理解しておくべきです。
リアルタイム取引 vs 基準価額による1日1回の取引
ETFの魅力の一つは、株式と同じようにリアルタイムで売買ができる点です。価格変動に合わせて指値で購入したり、短期的な利確を狙うといった戦略も可能となります。
これに対し、投資信託は1日1回の基準価額でしか取引できません。そのため、購入や売却の申込みをしても、実際の価格が確定するのはその日の終わり(15時など)であり、日中に価格変動があっても即時反映されません。
この違いは、運用の自由度に大きく影響を与える要素であり、短期トレードを志向する人にはETF、長期でじっくり積立したい人には投資信託が適しているとも言えるでしょう。
第3章:初心者がつまずきやすい誤解とその解消法
「ETFの方が全部優れている」は本当か?
最近では「ETF=低コストで合理的」という評価が一般的になりつつあります。確かに、信託報酬が非常に低く、流動性も高い点はETFの魅力です。しかし、それだけで「投資信託よりも優れている」と決めつけてしまうのは早計です。
たとえば、ETFは自分で取引のタイミングを判断しなければなりません。つまり、購入・売却の判断をすべて自己責任で行う必要があるのです。これは一見メリットのようでありながら、「相場のタイミングを読む自信がない」という初心者にとっては、むしろ大きなハードルになります。
一方、投資信託は積立設定をしてしまえば、あとは自動で運用が続いていきます。ドルコスト平均法のメリットを享受しながら、長期的な資産形成を目指せるという点では、むしろ投資信託の方が“続けやすい”選択肢と言えるでしょう。
投資信託=手数料が高いという誤解
「投資信託は手数料が高い」と聞いたことがある方も多いかもしれませんが、これは一部の旧来型商品に見られる特徴であり、現在の主流はむしろ「超低コスト化」が進んでいます。
たとえば、eMAXIS Slimシリーズや楽天・全米株式インデックス・ファンドといった人気商品は、ETF並みの低コスト(信託報酬0.1%以下)で運用されています。さらに、ネット証券を利用すれば購入時の手数料が無料のノーロード商品も多く、以前のような高コスト体質とは大きく様変わりしているのが現状です。
重要なのは、「どの投資信託を選ぶか」。現代では商品を正しく選べば、ETFと遜色ないコストで長期投資が可能です。
実際の使い分け方を知ることで、自信を持った投資判断ができる
投資信託とETFは、どちらかが「優れている」「劣っている」といった単純な二項対立で語れるものではありません。むしろ、目的やスタイルに応じて適切に使い分けることが、資産運用の鍵となります。
たとえば、以下のような選び方が参考になります。
- 毎月の積立を自動化したい → 投資信託
- マーケットの動きを見ながらタイミングを計りたい → ETF
- 海外ETFを活用してドル建て資産を築きたい → ETF
- 初心者なので運用を任せたい → 投資信託
こうした判断基準を持つことで、自分にとって“意味のある投資”が見えてきますね。
第4章:自分に合った商品はどっち?―目的別の選び方ガイド

初心者・投資時間が取れない人におすすめなのは?
「投資を始めたいけれど、仕事も忙しくてなかなか勉強する時間がない…」そんな方には、投資信託が圧倒的におすすめです。
なぜなら、投資信託は一度積立設定をすれば、あとは自動で資産が増えていく仕組みが整っています。毎月一定額を銀行口座から引き落とし、自動的に買付けされるため、タイミングを気にせずに投資を続けることができます。
これは「習慣化」や「継続」において非常に有利なポイントであり、長期投資を成功させるうえで極めて重要です。
長期分散投資を狙うならどちらが有利?
どちらの投資商品も分散投資に適していますが、「コスト重視で世界中に広く分散させたい」という人にはETFの活用も視野に入れるべきでしょう。
特に米国ETF(VTI、VT、VOOなど)は、世界経済に広く投資できるにも関わらず、信託報酬が0.03%〜0.05%と驚くほど低く、運用効率が非常に高いです。配当金が出る点も、資産の取り崩し戦略を考える際にはメリットになります。
一方、国内のインデックス型投資信託も近年は非常に優秀です。NISAやiDeCoといった税制優遇制度を活用することで、長期投資におけるリターン最大化も期待できます。
配当やインカムゲインを狙いたい場合の選び方
定期的に配当を受け取りたい、いわゆる「インカムゲイン」を重視したい場合は、ETFの方が適しています。特に米国高配当ETF(例:SPYD、HDV、VYM)は年3〜4%程度の分配利回りがあり、現金収入がほしい人には魅力的な商品です。
対して、投資信託は多くが「分配金なし・自動再投資型」となっており、受け取った配当を再投資して複利効果を最大化するスタイルが主流です。
このように、「受け取って使いたいのか」「再投資して資産を育てたいのか」によって、最適な選択肢が変わってくるのです。
第5章:最新動向から見るETFと投資信託の未来
日本国内での人気商品ランキングとその背景
近年、日本国内における投資信託とETFの人気は年々高まっています。特に2024年からスタートした新NISA制度の影響により、個人投資家の資産運用意識が大きく変化し、投資信託の積立枠と成長投資枠の両方で活発な投資が行われています。
たとえば、楽天・全米株式インデックス・ファンド(通称:楽天VTI)は、米国市場全体に広く分散投資できる商品として根強い人気を誇ります。また、eMAXIS Slimシリーズは「低コスト×長期投資」という現代のニーズに完全にマッチしており、個人投資家の“王道商品”として定着しました。
ETFでは、日経平均連動型ETFやTOPIX連動型ETFに加え、米国ETFのVOO(S&P500)、VT(全世界株式)、QQQ(NASDAQ100)などが非常に注目を集めています。いずれも「低コストで高度な分散が実現できる」点が、準富裕層を含む中上級層に支持される要因となっています。
近年のETF拡大トレンド(SBI・楽天・eMAXIS Slimなど)
ETF市場はここ数年で大きな進化を遂げました。とくに注目すべきは、SBI証券や楽天証券などの主要ネット証券が「取引手数料無料化」を進めたこと。これにより、従来はややハードルが高かったETF投資が、より身近な選択肢として受け入れられるようになりました。
また、2023年以降は「東証ETFの再編」が進められ、投資家にとって分かりやすいラインナップに改善されつつあります。日銀のETF買い入れ縮小など、政策面の影響もありますが、むしろ自律的な投資判断が求められる時代にシフトした証とも言えるでしょう。
海外ETFの注目トピックとその影響(VTI, SPYD, QQQなど)
米国では、ブラックロックやバンガードといった大手運用会社による「テーマ型ETF」の拡充が進んでいます。AI、クリーンエネルギー、EV、ヘルスケアなど、成長分野に特化したETFが次々と登場し、個人投資家にも注目されています。
特に、VOO(S&P500)やVTI(米国全体に分散)、SPYD(高配当ETF)といった定番商品は、為替リスクを取りながらも「米国経済の恩恵を直接受けたい」と考える投資家にとって非常に魅力的です。
このように、日本と海外、投資信託とETF、それぞれの最新動向を踏まえて、自分のポートフォリオにどのように組み込むかが、これからの資産形成において重要な鍵になります。
第6章:実際の運用シミュレーションで比較するパフォーマンス
投資信託 vs ETFで1年・5年・10年のリターン比較
「実際どちらの方が儲かるのか?」この問いは多くの人が気になる部分でしょう。過去のリターンを見てみると、たとえば「S&P500に連動する投資信託」と「VOO(S&P500連動ETF)」では、リターンそのものには大差ありません。ただし、手数料や配当の扱いによって、最終的なリターンには若干の差が生まれるケースがあります。
例えば、10年間で年平均7%成長した場合、信託報酬が0.1%の違いだけで、最終的な資産額は数十万円単位で変わることもあります。これは「長期で見れば小さな差も大きくなる」ことを示しています。
どちらが費用対効果が高い?シミュレーションで見る実力
以下に、100万円を10年間運用した場合の簡易シミュレーションを記載します。
商品 | 想定リターン | 信託報酬 | 最終資産額(概算) |
---|---|---|---|
投資信託(信託報酬0.1%) | 年7% | 0.1% | 約1,967,151円 |
ETF(信託報酬0.03%) | 年7% | 0.03% | 約1,996,428円 |
わずか0.07%の差でも、10年間の積み重ねで約3万円の差が生まれます。これは配当再投資や為替手数料などを含めるとさらに広がる可能性もあるため、費用面での比較は軽視できません。
税制上の扱いとその違いも要チェック
ETFは「配当金」が出るたびに課税対象になります。一方、投資信託は「分配金なし・自動再投資型」が多いため、課税が繰り延べられ、複利効果がより発揮されやすいというメリットがあります。
また、NISAやiDeCoなどの非課税制度では、投資信託との親和性が非常に高いため、節税メリットも大きくなります。つまり、「課税タイミング」や「制度との相性」まで含めて考えることが、実質的なパフォーマンス評価には不可欠なのです。
第7章:初心者が安心して始めるための実践ステップ
口座開設から購入までの流れ(証券会社ごとの特徴)
まずは証券口座を開設しましょう。初心者に人気なのは、SBI証券・楽天証券・マネックス証券といったネット証券です。いずれもスマホで完結する簡単な手続きで開設でき、手数料も割安、商品ラインナップも豊富です。
ETFを購入する場合は「取引所での売買」となり、株式と同様の注文方法を使います。投資信託の場合は「積立設定」が可能で、自動的に買付けが行われるのが特徴です。
少額から始められる!毎月積立 vs 一括投資
初心者にとって心強いのは「少額投資ができる」ことです。多くのネット証券では、100円〜1,000円単位で積立が可能。毎月少しずつ積み上げていくことで、リスクを分散しながら着実に資産を増やしていけます。
一括投資は短期間で大きな資産を運用したい場合に向いていますが、相場のタイミングを読むリスクもあるため、まずは積立から始めるのがおすすめです。
初心者におすすめの具体的な投資商品リスト
最後に、初心者でも安心して始められる定番の投資信託・ETFを紹介します。
【おすすめ投資信託】
- eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)
- 楽天・全米株式インデックス・ファンド(楽天VTI)
- ひふみプラス(国内アクティブ型)
【おすすめETF】
- VTI(米国全体)
- VT(全世界)
- SPYD(米国高配当)
- MAXIS全世界株式(東証ETF)
いずれも「低コスト」「分散性」「長期投資向き」という三拍子が揃っており、NISAやiDeCoとの相性も抜群です。
注意点・まとめ:どちらが正解ではない、自分の「目的」に合った選択を

投資信託とETFを比較してきましたが、ここで改めて強調したいのは「どちらが優れているか」を決めることではありません。本当に大切なのは、自分の資産運用の“目的”と“ライフスタイル”に合った選択をすることです。
たとえば、長期的に資産を積み上げたい人には、シンプルで自動化しやすい投資信託が適しています。時間をかけずにコツコツと資産を育てたい方にとっては、毎月の積立投資が最適な手段となるでしょう。
一方で、自分で相場をチェックし、タイミングを見ながら投資したい方や、海外資産にも広く分散して持ちたいと考える方にとっては、ETFの柔軟性とコストの低さが強力な味方となります。
また、税制面や資産形成のゴールによっても選択肢は変わってきます。NISAやiDeCoを活用する場合は、信託報酬の安い投資信託が主力になるでしょうし、将来的に配当収入を生活資金の一部に充てたいなら、ETFの配当機能が魅力になります。
つまり、正解は人それぞれ。これこそが、資産運用が「個人の戦略」だと言われるゆえんです。
投資を「自分の言葉」で語れるようになるために
この記事を通じて、少しでも「投資信託とETFの違いが腑に落ちた」と感じていただけたなら、執筆者としてこれほど嬉しいことはありません。
資産運用を始めるうえで、「なんとなく」や「みんながやっているから」といった理由では、継続する力が得られません。逆に、しっかり理解して「自分にとってなぜこれを選ぶのか」が明確であれば、日々の値動きにも一喜一憂せず、長期的な視点で着実に資産を育てていけるはずです。
どちらを選んでも、「継続」と「目的意識」こそが成功の鍵。
最後に一言。投資は難しそうに見えるかもしれませんが、一歩一歩理解を重ねていけば、きっと“自分の言葉で語れる投資”に近づいていけます。まずは少額でも構いません。口座を開き、実際に自分の資金で運用を始めてみることで、学びはより深く、実感を伴うものになるでしょう。

ファイナンス専門ライター / FP
資産運用、節税、保険、財産分与など、お金に関する幅広いテーマを扱うファイナンス専門ライター。
金融機関での勤務経験を活かし、個人投資家や経営者向けに分かりやすく実践的な情報を発信。特に、税制改正や金融商品の最新トレンドを的確に捉え、読者の資産形成に貢献することを得意とする。