
株式や不動産、暗号資産といった伝統的・新興の投資対象が乱立する現代。その中でじわじわと注目を集めているのが、クラシックカーという実物資産です。
とりわけ近年では、世界的なインフレ傾向や地政学的リスクの高まりを受けて、「モノに価値が残る」資産への回帰が始まっています。2010年代後半から2020年代にかけて、クラシックカーの価格は欧米の富裕層を中心に年平均7〜10%程度の上昇を見せたという調査もありました。実際、2016年にはオークションにて1962年製のフェラーリ250 GTOが約48億円で落札され、クラシックカー市場の可能性を世に知らしめました。
このような背景から、単なる趣味としてではなく、戦略的資産形成の一環としてクラシックカーに目を向ける個人投資家や資産家が増加しています。本記事では、クラシックカー投資に関心を持つ方に向けて、その魅力、リスク、投資戦略を多角的に掘り下げていきます。
1. クラシックカー投資とは?趣味と投資が交わる世界

クラシックカーの定義と投資対象車種
「クラシックカー」と一言で言っても、その定義は国や団体によって異なります。一般的には、製造から20〜30年以上が経過し、一定の歴史的・美的・技術的価値が認められた車両がクラシックカーとして扱われます。
とりわけ投資対象として人気があるのは、以下のようなブランドとモデルです。
- フェラーリ 250 GTO(1962〜1964年)
- ポルシェ 911(1960年代〜1970年代初期モデル)
- アストンマーティン DB5(1963年)
- ジャガー Eタイプ(1960年代)
これらの車両は単なる交通手段ではなく、芸術品であり、また自動車技術の変遷や時代の象徴を映す文化的資産とも言える存在です。希少性とブランド力が価格に直結するため、製造台数が少なくオリジナルの状態を保っているモデルほど高額で取引される傾向があります。
市場規模と注目度の変遷
クラシックカー市場は、2023年時点で全世界の市場規模が300億ドルを超えるとも言われており、その取引の中心地は欧州、アメリカ、そして近年ではアジア圏にまで拡大しています。
特に注目すべきは、2010年代以降のオークション市場の成長です。世界的な競売会社であるRM Sotheby’sやBonhamsは、毎年数百台ものクラシックカーを扱い、億単位の取引も珍しくありません。パンデミック以降もオンライン取引の拡充によって市場の流動性が向上し、クラシックカーはさらに「投資資産」としての地位を固めつつあります。
なぜクラシックカーが資産として評価されるのか
クラシックカーが資産運用の一環として注目される背景には、いくつかの明確な理由があります。
まず第一に、実物資産であることの安心感。金融危機や通貨の不安定さの中でも、クラシックカーは物理的な価値を保持し続けます。
第二に、価格の相関性の低さ。株式や債券、不動産と異なり、クラシックカーの価格変動は市場全体の影響を受けにくく、ポートフォリオの分散効果が期待できます。
さらに、所有の満足度と趣味性の高さも魅力のひとつ。コレクターズアイテムとしてだけでなく、イベント出展や走行体験も楽しめるため、「使いながら増やす」という他の投資にはない魅力を持っています。
これらの要素が組み合わさることで、クラシックカーは「嗜好×投資」という極めてユニークな資産となり、富裕層を中心に投資ポートフォリオの一部として組み込まれるようになってきたのです。
2. クラシックカー投資のリターンの実態

過去の代表的な価格上昇事例
クラシックカー投資が注目される背景には、過去の驚異的な価格上昇があります。象徴的な例として挙げられるのが、1962年製フェラーリ250 GTOです。この車は、1980年代には約2,500万円で取引されていたものが、2018年にはRM Sotheby’sのオークションで4,800万ドル(約52億円)という驚異的な金額で落札されました。
また、ポルシェ911カレラRS(1973年)も投資対象として人気が高く、2000年代には1,000万円前後だった個体が、現在では2,500万円〜3,500万円の値を付けることも珍しくありません。こうした例を見ると、年平均10%以上のリターンを記録するクラシックカーも存在しているのがわかります。
もちろんすべての車がこれほどの伸びを示すわけではありませんが、ブランド力、希少性、状態の良さという3要素を満たす個体は、高い確率で資産価値が維持・向上している傾向にあります。
リターンの構成要素
クラシックカー投資による収益は、単なる売却益だけではありません。リターンは以下のように複数の要素から構成されます。
- キャピタルゲイン(売却益)
もっとも直接的な利益。人気や希少性が高まれば数年で数倍に跳ね上がる例も。 - イベント参加による収入・副次効果
クラシックカーの展示会やラリー、コンクールへの参加により、入賞すれば価値が数百万円単位で跳ね上がるケースも。広告出演や映画への貸し出しもビジネスチャンスに。 - 貸し出し・シェアリングサービス
欧米ではクラシックカー専門のレンタルや投資型ファンドも登場しており、オーナー収益化の道が多様化しています。
このように、クラシックカーは「ただ所有するだけ」の資産ではなく、動かして稼ぐ資産にもなり得るのが特徴です。
他資産との比較:株式・不動産・金と比べてどうか?
クラシックカー投資のリターンを他の代表的資産と比較すると、以下のような特徴が見えてきます。
資産クラス | 年平均リターン(目安) | リスク(価格変動) | 流動性 | 特徴 |
---|---|---|---|---|
株式(S&P500) | 約7〜10% | 高 | 高 | 成長性が高いが市場の影響を受けやすい |
不動産(日本) | 約3〜5% | 中 | 中 | 安定的だが維持コストが高い |
金 | 約3〜6% | 中〜高 | 高 | インフレ耐性ありだが収益性に乏しい |
クラシックカー | 5〜15%(個体差あり) | 中〜高 | 低 | 高額転売例あり、趣味と実益の融合 |
特に注目すべきは、クラシックカーは他資産と相関性が低いため、分散投資としての効果が非常に高い点です。例えば、株式市場が下落しても、クラシックカー市場は独自の需給バランスで動くため、資産全体の変動リスクを軽減してくれます。
3. クラシックカー投資の主なリスク

いくらリターンが魅力的でも、クラシックカー投資には明確なリスクが存在します。それらを理解せずに始めるのは非常に危険です。ここでは、主要なリスクについて整理します。
流動性リスク:買い手が限られる市場
クラシックカー市場は非常にニッチであり、流通量が限られていることが特徴です。そのため、売却したいタイミングで買い手が見つからない可能性があります。
特に一般的な中古車市場とは異なり、クラシックカーの購入には知識や資金力が求められるため、対象となる買い手層が限られます。したがって、現金化には数ヶ月〜年単位を要することも覚悟しなければなりません。
維持・保管コスト:管理費・保険・修理
クラシックカーは「維持して初めて価値が保たれる」資産です。オリジナル部品を用いた修理、湿度管理されたガレージでの保管、専門保険の加入など、年間で数十万円〜100万円超のコストがかかることも珍しくありません。
また、万が一の故障に備えて、信頼できる整備士やレストア職人とのつながりも重要です。維持コストを正確に見積もらずに参入すると、収益が目減りしてしまうリスクがあります。
真贋リスクとコンディション詐欺
高額で取引されるクラシックカー市場には、当然ながら偽物や改造車、過剰評価された車両も混在しています。見た目が美しくても、シャーシナンバーの改ざんや、非オリジナル部品の使用などが後で発覚すれば、大幅な減価に直結します。
そのため、購入時には専門鑑定士による事前調査(プリバイインスペクション)が欠かせません。信頼できる業者や、実績あるオークションを通じた取引が安心です。
人気の変動と市場トレンドの不安定さ
クラシックカーの価格は、「芸術作品」と似ており、感情的価値に強く依存します。つまり、流行や時代の価値観の変化によって価格が大きく上下します。
かつては不人気だった車種が突如脚光を浴びることもあれば、逆にかつての人気モデルが急落することもあります。これは、映画やドラマの影響、著名人の購入報道などがきっかけになるケースも。
したがって、市場の動向を継続的にウォッチし、価値の変動に敏感であることが求められます。
4. クラシックカー投資の前提と心構え

趣味と投資のハイブリッドな立ち位置
クラシックカー投資を語るうえでまず大切なのは、「純粋な投資」ではなく、趣味性と経済性が交錯する特殊なポジションにあるという認識です。これは例えば、不動産や株式のように数字だけで判断できるものとは異なり、美的感性やブランドへの愛着が価格形成に影響するという独自性を持っています。
そのため、クラシックカー投資を成功させるためには、「儲かるから買う」ではなく、「好きだからこそ価値が分かる」という視点が極めて重要になります。逆に言えば、この分野では情熱がなければリターンを最大化できないとも言えるでしょう。
「知識」と「情熱」がリターンを左右する
クラシックカーの価格は単なる年式や走行距離だけで決まるものではありません。車両のヒストリー(過去のオーナー、修復歴、イベント実績など)やオリジナリティの高さ、世界での流通台数など、極めて専門的かつ複合的な知識が問われます。
加えて、市場は常に流動しており、今後人気が高まりそうな“穴場モデル”を発掘する鑑識眼こそが最も大きなリターンを生む源泉です。これはまさに「知っている人が勝つ世界」と言えるでしょう。
一方で、感情に流されすぎると、本来の投資判断が鈍り、不要な高値掴みや過剰整備に走ってしまうリスクもあります。情熱を持ちつつも、冷静な資産運用者としての自制心が求められるのです。
短期ではなく長期的視点での構築が鍵
クラシックカー投資は、短期トレードには向いていません。買ってすぐに高騰するモデルは稀で、価値が評価されていくには一定の時間と市場での再評価が必要です。むしろ保有年数が長いほど、車両の希少性が増し、価値が高まる可能性があるのがこの投資の特徴です。
また、保有中にもイベントに出展したり、丁寧に整備を行ったりすることで、車両そのものの「ストーリー」が強化されるという側面も見逃せません。こうした「育てる資産」としての考え方が、成功のカギを握っています。
5. ポートフォリオ戦略としてのクラシックカー

富裕層のポートフォリオにおける位置づけ
多くの富裕層がクラシックカーに注目しているのは、単なる趣味の延長ではありません。彼らの資産ポートフォリオを俯瞰すると、株式や債券、不動産といった伝統的資産に加えて、オルタナティブ資産(代替資産)を10〜20%程度組み込んでいるケースが増えています。
クラシックカーはその中でも、「実物資産かつ可動性がある」「趣味としても満足度が高い」「市場の波に左右されにくい」という特徴から、選ばれし資産家の“遊びの中の本気投資”として位置づけられているのです。
オルタナティブ資産としての役割と分散効果
オルタナティブ資産とは、伝統的資産とは異なる値動きを示すことで、ポートフォリオ全体のリスクを軽減し、安定性を向上させる役割を担います。クラシックカーはその代表格であり、同じカテゴリにはアート、ワイン、時計なども含まれます。
たとえば2020年のコロナショック時、世界中の株価が大きく下落した一方で、クラシックカー市場は大きな値崩れを見せず、むしろ人気モデルの価格は上昇したというデータもあります。これは、資産価値が金融市場の心理やパニックに左右されにくいことを示しています。
他資産との相関性の低さがもたらす安定性
資産運用において「相関性の低さ」は極めて重要な要素です。クラシックカーは株式市場とほぼ無関係な動きをするため、金融市場の暴落リスクを吸収する“クッション”としての機能が期待されます。
また、クラシックカーは市場がグローバルであり、為替や地域経済にも影響を受けにくいという特性も持ちます。日本で価値が下がっても、欧米市場で再評価される可能性があるなど、地域分散投資の要素も持ち合わせているのです。
こうした特性から、資産総額が大きくなった投資家ほど、クラシックカーを戦略的にポートフォリオの中核に近づけていく傾向が強くなっています。
6. 海外クラシックカー市場を活用する戦略

欧米市場の動向と主なオークション(Bonhams, RM Sotheby’s等)
クラシックカー投資において、欧米市場の活用はもはや必須と言っても過言ではありません。理由は明確で、世界的に価値の高い車両の大半が欧米を中心に流通しているからです。
その中心を担うのが、歴史あるオークションハウスです。とくに名門「RM Sotheby’s」や「Bonhams」は、クラシックカー専門の高級オークションを毎年開催しており、億単位の取引が日常茶飯事。これらのオークションでは、車両の状態や履歴が詳細に開示されるため、信頼性も高く、投資対象としての安心感があります。
また、最近ではオンライン入札も可能になっており、日本からでも参入ハードルが格段に下がっています。時差や手数料を考慮した上で、欧州や米国の価格トレンドをウォッチすることが極めて重要です。
為替リスクと購入時の留意点
海外車両を購入する際に最も無視できないのが為替リスクです。たとえば1ドル=110円のときと1ドル=150円のときでは、同じ10万ドルの車両でも支払額が400万円以上も異なることになります。
そのため、為替ヘッジを活用したり、相場が円高のタイミングで事前にドルを保有するなど、為替変動への対策は投資家としての重要な判断ポイントです。
さらに、海外オークションでは落札価格の他に輸送費、保険、通関費用、登録費用などもかかるため、総コストを精緻に見積もることが必要不可欠です。場合によっては国内販売車よりもコスト高になるケースもありますが、海外モデルの希少性と将来性を加味して判断することが肝心です。
輸入時の税関手続きと登録費用
クラシックカーを海外から輸入する際には、以下の手続きが必要になります。
- 関税・消費税の支払い(車両価格の約10%〜)
- 輸入通関申告と審査
- 国土交通省による車両の保安基準適合審査
- ナンバープレート登録と名義変更手続き
特に保安基準については、車両が古いために現代基準を満たしていない場合があり、追加の改修が必要になる可能性があります。また、車検取得までに時間を要する場合もあるため、余裕をもったスケジュール管理が重要です。
このように、税務・法律・輸送に関する知見を持った専門家との連携が、海外クラシックカー投資では成功の鍵を握ります。
7. クラシックカーイベントと価値の向上

「コンクール・デレガンス」などの影響力
クラシックカーの世界では、展示会や競技会への参加実績が価格に大きな影響を与えるという特異な市場特性があります。その中でも特に格式高いのが「コンクール・デレガンス(Concours d’Elegance)」です。
これは「美しさ」「オリジナリティ」「保存状態」などを競うイベントで、世界各地で開催されています。特にイタリア・ヴィラデステや米国・ペブルビーチでの開催は世界的に権威が高く、受賞歴がある車両は数千万円以上のプレミアが付くこともあります。
つまり、単なる保有から一歩進んで、評価される車両へと育て上げることができれば、その資産価値は飛躍的に高まるのです。
展示・入賞歴が資産価値に与えるインパクト
オークションカタログやディーラー情報では、車両の経歴に「Concours受賞歴」「著名オーナー歴」「映画・メディア登場歴」などが詳細に記されます。これらはすべて付加価値として価格に反映される要素です。
例えば、同じモデルの車両でもイベントでの受賞歴があるだけで数百万円〜数千万円の価格差がつくのは、クラシックカー投資ならではの現象です。
そのため、購入後に「どのように磨き、どう評価されるか」を意識することが、リターン最大化への道と言えるでしょう。
ネットワークと情報収集の場としての機能
クラシックカーイベントの価値は、評価だけではありません。世界中の愛好家、バイヤー、修復士、ディーラーと直接つながるネットワークの場としても機能します。
ここで得られる情報は、まだ市場に出ていない希少車の存在、オフマーケット取引の機会、最新のトレンド動向など、インターネットでは決して得られない「一次情報」です。
つまりイベントへの参加は、自身の知識と人脈を広げる実践的な学びの場でもあり、次の投資のヒントを得るための戦略的行動と言えるのです。
8. クラシックカー投資と税制の関係

売却益にかかる税金とその計算方法
クラシックカーを売却した際に得られる利益、いわゆるキャピタルゲインには、基本的に所得税(譲渡所得)が課税されます。ここで注意すべきは、「生活用動産」として課税対象外となる場合もありますが、投資目的で保有していた場合は課税される可能性が高いという点です。
譲渡所得の計算式は以下の通り:
譲渡所得 = 売却価格 -(購入価格+譲渡にかかった費用)− 特別控除50万円
たとえば3,000万円で購入したクラシックカーを5,000万円で売却し、その他費用が200万円かかった場合、課税対象となる譲渡所得は:
5,000万円 −(3,000万円+200万円)− 50万円 = 1,750万円
この金額に対して、所得税と住民税を合わせて最大約20%(課税所得による)が課されるため、約350万円の納税が必要になる可能性があります。
なお、所有期間が5年を超えると「長期譲渡所得」となり、税率が軽減される(特別控除など)ケースもあるため、売却タイミングの戦略も税務上極めて重要です。
相続・贈与時の評価と注意点
クラシックカーは相続財産としての扱いも要注意です。相続税の計算においては「時価評価」が原則であり、これはオークション結果や鑑定士による査定が基準となります。
特に市場価値が年々上昇している車種は、想像以上に高い評価額が算出されることも。その結果、相続税負担が大きくなるリスクもあるため、事前に専門家による定期的な評価と記録の保管が重要になります。
贈与の場合も同様で、年間110万円を超える贈与は課税対象となり、鑑定評価額ベースで課税額が算出されます。信頼性の高い第三者評価を取得しておくことで、税務署とのトラブル回避にもつながります。
法人保有スキームによる活用の可否
一部の富裕層や経営者は、クラシックカーを法人名義で所有し、資産管理会社や事業会社での経費化や節税を検討するケースがあります。
理論上は、業務用車両、広告宣伝用、展示用などの名目で法人保有が可能ですが、税務調査では「実際の使用実態」が強く問われるため、注意が必要です。
たとえば、
- 営業活動に関連しない
- プライベート利用の頻度が高い
- 購入動機が明らかに私的趣味目的
と判断されれば、否認され、課税処分や追徴の対象となるリスクも。
節税メリットを追求するならば、税理士と連携し、合理的な業務目的や使用記録を残すことが前提です。場合によってはリース形式や法人貸与という方法での活用も検討できます。
9. クラシックカー投資の始め方

市場調査と情報収集のステップ
クラシックカー投資を始める際には、まず何よりも「市場を知ること」が出発点です。具体的には以下のようなアプローチが有効です。
- オークションカタログのチェック(RM Sotheby’s、Bonhams、Bring a Trailerなど)
- 専門誌・コレクターズガイドの購読
- イベント参加(クラシックカーショー、展示会)
- クラシックカー販売店の動向ウォッチ
これにより、「どの車種が、どの年式で、いくらで取引されているのか」「価格上昇している背景には何があるのか」など、市場の“感覚”が徐々に身についてきます。
信頼できる業者や鑑定士の選び方
クラシックカー投資において、最も大きなリスクの一つが「誤った購入」です。そのため、信頼できる専門業者・販売ディーラーの選定が極めて重要になります。
優良な業者には以下のような特徴があります:
- 詳細な整備履歴・写真・オーナー記録を提示してくれる
- 第三者鑑定(インスペクション)を推奨している
- 明朗な価格設定と過去の販売実績がある
- 購入後のアフターサポート体制が整っている
また、独立系の鑑定士にプリバイインスペクション(購入前検査)を依頼することも必須です。これにより、見た目では分からない修復歴や偽装の有無を確認できます。
購入〜保管までの実務フローと注意点
実際に購入を決めた後は、以下のようなフローを踏むことになります:
- 価格交渉・契約
- 鑑定・整備記録の確認
- 輸送(国内・国外)と保険加入
- 登録手続き(車検・名義変更など)
- 保管環境の整備(湿度管理・セキュリティ対策)
特に保管については、適切な環境での管理が資産価値の維持に直結します。専用ガレージやクラシックカー専門の保管サービスを利用するなど、長期的な視点でコストを計算することが求められます。
そして、購入後も定期的なメンテナンスを怠らず、「走れる状態」「見せられる状態」を維持し続けることが、次の売却チャンスに大きく影響します。
まとめ:クラシックカー投資はロマンだけじゃない

クラシックカー投資は、その華やかな見た目とは裏腹に、冷静な判断力と深い知識が求められる本格的な資産運用手法です。フェラーリやポルシェ、ジャガーといった名車が過去に何倍もの価格で取引されてきた事実は、単なる憧れやロマンだけでなく、実際の投資対象としての合理性を証明しています。
一方で、リターンだけを追い求める投資家にとっては、クラシックカーの世界はやや不向きかもしれません。なぜならこの市場では、感性や審美眼、そして何より“情熱”が投資成果に直結するからです。オークション価格の変動、展示会での評価、整備履歴の違い——あらゆる要素が複雑に絡み合いながら資産価値が形成されていきます。
しかし、そこにこそクラシックカー投資の真髄があります。
「心が動く投資」は、頭だけで稼ぐ資産よりも豊かなリターンをもたらしてくれる。
クラシックカーは、その象徴的な存在です。
正しい知識と入念な調査、そして信頼できるパートナーとの連携があれば、クラシックカー投資は単なる趣味を超えた“知的で戦略的な資産形成”になります。市場のトレンドに左右されず、世界中の愛好家とネットワークを築きながら、「育て、走らせ、見せる」喜びと資産価値の両立ができるのです。
クラシックカー投資は、まさに“ロマンと戦略”の融合。
目先の利益にとらわれず、自身の価値観や人生の哲学に沿った資産運用を志す方にこそ、クラシックカー投資は新たな選択肢として、大きな可能性を秘めているのではないでしょうか。

ファイナンス専門ライター / FP
資産運用、節税、保険、財産分与など、お金に関する幅広いテーマを扱うファイナンス専門ライター。
金融機関での勤務経験を活かし、個人投資家や経営者向けに分かりやすく実践的な情報を発信。特に、税制改正や金融商品の最新トレンドを的確に捉え、読者の資産形成に貢献することを得意とする。